30.2 ページ13
「………ずっと、療養、していたから学校に行ってないってことと
自然豊かな場所じゃなきゃ生きられないってこと。
それから………」
「それから？」
「………二宮くんが」
「俺？」
言って、いいのかな？
と、思いながらも、避けては通れない気がして、続ける。
「二宮くんが、サトシさんの療養に責任を、感じていること………」
恐る恐る伝えると、予想に反して二宮くんは笑った。
「それ、言ったの翔さん？………やられたわ」
クスクス笑いながら、二宮くんが言う。
その真意がわからないまま、二宮くんの言葉を待つ。
「サトシ、ね。療養って言ったでしょ？アレ、病院とかじゃなくてね。俺らが今、住んでいるとこに、ずっといんの」
二宮くんは、そう言った後、
「あ、この話長くなるかなぁ。時間、平気？」
と、付け足すように、言った。
「………うん、平気」
「そ？んじゃ………」
二宮くんは、壁に寄りかかっていた身体をおこして、
ガラガラガラ、と窓を開ける。
それから、準備室から椅子を2脚拝借して戻り、二つを離して置く。
窓側に置いた一方の椅子を、くるんとひっくり返して、背凭れを抱えるように腰掛ける二宮くん。
「どーぞ」
「ありがとう」
もう一方の椅子を勧められて、トン、と腰掛ける。
屋上のように少し拓けたスペースで、外側に向けて直線上に並べられた椅子。
コンクリートで固められた塀があるから、座った状態からは中庭の様子も見えない。
プォーッと間延びしたように響く、音階を探る吹奏楽のラッパの音。
遠くから聴こえる「エーイッ！」という野球部の掛け声。
青く、高い空。
今、ここにあるのは、それだけ。
その空間で、互いの顔が見えないフォーメーションで、話しは続けられる。
「何、話していたんだっけ？
………あ、そうそう。サトシが、ずっとあそこで暮らしているって話し」
「ずっと、って？」
どれくらい？って意味で訊き返す。
「………ざっと10年以上」
「じぅ………ねん？」
………10年前って、私が小学2年生の頃から？
「外に出るようになったのは、ここ3か月くらい、ってところかな」
ガタッ、思わず椅子を引きずるように、身体を揺らしてしまう。
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年8月26日 0時
