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カンペキ、に出鼻を挫かれてしまった………
学芸会の前日のように、昨日は、いっぱい練習をした。
たぶん、私を見て逃げるように行ってしまう二宮くんを捕まえる方法。
二宮くんに話したいこと、伝えたい要点。
机に向かって、頭ん中で、イメージトレーニングしながら、何度も考えた。
万を辞して臨んだ今日、
月曜日。
シミュレーションには全くなかった状態に陥る。
「ちょっと、いい？高橋さん」
授業が終わり、いざ出陣、のタイミングで現れた二宮くん。
椅子に座っていた私は、机の前に立ち塞がる二宮くんに面食らって、
阿呆みたいに口を開けて二宮くんを見上げた。
「不意打ちに弱いんだね。
自分は神出鬼没なくせに」
例の、二宮くんの学校での秘密基地。図書準備室からベランダに出たとこで。
壁に寄りかかりながら、二宮くんがクスクス笑いながら言う。
確かに………二宮くんの預かり知らぬとこで、頻繁に二宮くん家に出没している私。
二宮くんにしたら、不意打ちもいいとこだったんだろうけど、いつも自然に受け入れてくれていたのは、たぶん皆がそういう雰囲気を作ってくれていたから。
「な………に？」
要件を聞こうとするだけで、掠れてしまう声。カラカラの喉の状態で気付く。
私、緊張しているんだ………。
「何、って。話しあるの、そっちだと思ったんだけど」
口元を少しだけあげて、じっと私を見つめる二宮くん。
感情を読みとらせない表情。
閉ざしている、とも、演じている、とも少し違う。
何も、思うところないような、フラット、の二宮くん………
「なに、話し、なくなっちゃった？」
言葉を発しようとしない私を見て、あっけらかんと二宮くんが言う。
昨日、言おうとしたことは、なんだっけ………
サトシさんが水族館で見せてくれた好奇心について？
サトシさんに溢れる可能性について？
みんながみんな、二宮くんを心配していること？
二宮くんの見透かしたような瞳に吸い込まれて、
足元を掬われそうになる。
「じゃ、俺のターン、ってことでいい？」
「………」
私の沈黙を、了承と捉えた二宮くんがニッコリと笑って言った。
「サトシの、ことを、ちょっとね？」
「………サトシさんのこと？」
「………どこまで知って、いるんでしたっけ？」
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年8月26日 0時
