GRAY 1 〜Light gray〜

優しい忠告 ページ33

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『まもなく電車がきます』


ホームの掲示が点灯して
櫻井さんが俺と大野サンを交互に見る。


「灰色を見たのは、
この時間、この位置、この電車でOKだよね？」


「ん」
「はい」


電車が
ヘッドライトで地下トンネル内を照らしていく。


キーッと高い金属の摩擦音を響かせながら、
重たいハコは連結部を軋ませて停車する。


ホームのスクリーンドアが一斉に開き
電車のドアがガタン、と開く。


「……行こうか？」


櫻井さんの声に、
大野サンと2人コクン、と頷く。


大野サンの背中に手を添えて1歩踏み出すと
大野サンが確認するように俺を見る。


明るい車内に入った途端に、
視界に広がるたくさんのイロ。


車内を彩る宙吊り広告よりずっと、
目をひくたくさんの、人の色。


多様に明暗を変えながら、
規則性を持たずに展開する色に
眼も頭も心もフル活動していく。


クイッ、大野サンに袖をひかれる。


「？」


「見ようと、すんな」


「エ？」


「灰色なら、勝手に見えるよ。
ニノ、アレだろ？
ギアがどーたら言ってたじゃん。
見えないようにしときな」


大野サンの目が、
伏せられたり、俺を見たりを繰り返しながら、
細められる。


「うん……」


灰色を見定めるために、全開でいたけれど。


大野サンの言うことは一理あると思い、
意識してイロを消す。


俺の様子をじっと見ていた大野サンが、んふふ、と笑って視線を戻す。


「俺の隣より、
相葉チャンの隣にいた方がいいんじゃない？」


大野サンが呟くようにそう言って、
視線を3人の方へと送る。


俺と大野サンは車内が見渡せるようにドア付近
椅子の端に背を預けるようにして立つ。
その数歩分奥まった位置にいる翔さん、
潤くん、相葉サン。


潤くんも相葉サンも、
翔さんを挟むようにしてつり革を持ち、
話しに興じている。


「確かに……強い、かな」


大野サンがポツリとそう言って、口元を緩めた。


「エ？」


大野サンは、ミえないんじゃ？


素知らぬ顔して口を閉ざす大野サンを
思わず凝視してしまう。


「なに？」


心外だ、とでも言うように、
俺を見返す大野サン。


「ミえるんですか？」


「見えないって言ったじゃん」


「だって、今、強いって」


「そんなこと言った？」


「言った」


とぼける大野サンがおかしくて、
笑いを含みながら言い返す。


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