GRAY 1 〜Light gray〜

氾濫するイロ ページ2

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『友達』の疑問は、もっともだと思う。


知らない人の手首を
がっちりホールドしているなんて
ちょっとした電車内での迷惑行為に見えなくもない


いや
むしろ
そのまんま、そう見えてると思う


「ん。降りたら、話す」


手首を掴んだ本人は、
今は説明する気がないらしい。


『友達』も 何故かそれで納得したらしく
その先を促そうとはしなかった。


しばらくして、
手首を掴んでいる彼が少し動いた気配を感じる。


「平気？もーすぐ駅だから」


うっすらと目を開けると
淡い色した瞳が俺の様子を伺っていた。



「たぶん、だけど。
降りたら、少しラクになる、と、思う」


なんの根拠もない予測なんだろうけれど
その人から言われると説得力があった。


冷や汗をかきながら
冷たくなった指先に力を入れる。



ーーーキキィーッ



地下鉄が徐行した後
緩やかに停車して


プシューッとドアが開く



「行くよ？」



ホームに発車メロディーが流れる中
手首を掴んでいた手が
俺の手に繋ぎ直される。


彼がゆっくり歩き出し
俺を導く。


それから、
彼の『友達』が俺たちの後へと続いた。



ホームに降りて、
一息つく。


『彼』によってベンチに座らせられ
頭を深く下げた状態で目をつむる。


動機が早い
貧血にも似た症状
何度も唾を飲み込んで
ゆっくり呼吸することを意識する。


「ちょっとヒンヤリするよ？」


『友達』の声が聴こえると同時に
額に感じる冷たい温度


缶ジュース、だ


偏頭痛が始まっていた頭が
スーッとラクになる


「智くん。どうする？」


「……どーすっか」


「どうするかって、
アナタ、考えがあって降りたんじゃないの？」


責める様子はなくて
どちらかというとおかしさを堪えたような口調で『彼』に質問する『友達』


「わかんない。
ただ、あのままじゃヤバイなって思ったんだもん」


『彼』が独り言のように言う。


「だもん、て///」


『友達』が少し笑いを洩らした後
話しをやめた。


「平気かな？少し……喋れる？」


『友達』の声に
ゆっくりと目を開ける。


開きっぱなしの俺に飛び込んでくる
イロ、イロ、イロ


日陰から急に日向に出たときみたいに
光線の残照のようなイロが
目の中でパチパチと弾ける


クラクラする目元を押さえながら
視線をあげる。



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