BLACK『完結』

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「………見えない人がいたんだ」


「………」


「事故で、助かった後。
入院中に病院で気づいた。
時々………本当に時々だけど、顔が黒く霞んで見えない人とすれ違うことがあるって」


「？」


「その人たち、ついていくと同じ棟の方へ向かってた。………ホスピス、だって看護師さんが、教えてくれて。
終末医療の……特別な、施設だって………」


「終末医療………」


「見間違いじゃないか、って。
事故で損傷を受けた脳は、一時的に錯覚おこす場合もあるって聞いてたし………
退院して、学校また、通えるようになってから、
確かめに、行っていたんだ………一番近くの大きな病院に」


病院へ来る理由を、
『見舞いみたいなもん』
と答えた智くんを思い出す。


「もしかしたら、また、顔、見えない人いるかもしれないって。
終末医療受けてた人みたいに、黒く霞む人がいるかどうか、学校の帰り、確認のために病院に見に行っていて………

そこで、祐樹と翔くんを病院の中庭で見かけたんだ………
そん時、祐樹の顔が……顔が………俺には、黒く………」


「さ、と、しく…っ！！」


全てが明らかにされてく。
非科学的な、説明の仕様もないような、合致。

ありえないと思うのに、
信じたくないと思うのに、
智くんの話しは、妙に論理性があって、
智くんのこれまでの、謎の言動を思いおこせば、イヤになるくらい客観的な裏づけになる気がした。


俺の名字も知らずに俺の名前を呼び、
妙に病院なれしているのに、
見舞いの仕方がありえないくらい、なってなかった。


全ては、病院で見かけた祐樹が、
以前、ホスピスにいた人たちと同じように、
黒く霞んで見えたから。

智くんの、目には、そう映ったから。


ーーーちょっと、待て？

もしかして、

…………智くんは、さっき、遺影を見て、
初めて、祐樹と「会った」の？

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