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週明け。


この第1日目が肝心だって知っている俺は、
すごいドライだと思う。


周りが俺との距離を測りかねている時、
笑みを浮かべて見せてやる、「大丈夫だよ」

そうすると、相手から、安堵の息さえ聴こえてきそうに、微笑まれ、ぽん、と背中を叩かれたり、肩に手を置かれたりする。

心ない俺は、お願いだから、その手を早く、
どかしてくれないか、と心内で思う。


「なんか力になれることあったら、言えよ」


眼を細めて、頷いてみる。
相手の意に、沿ってやる。
やがて、話しかけてくれた奴が、満足して去っていってくれるはずだから。

全然。
見当違いもいいとこだよ、と思う。

力を貸して欲しいのは、俺に、じゃない。
祐樹、に。
祐樹が生きられるチカラを貸して、欲しかったよ。


ーーー 1日がヤケに長く感じられて、苦しかった。

代わり映えないような、窓から見る空。
ちっとも流れていかないような雲。
スーッと動く教室の時計、銀色の秒針。
教室の黒板、先生が書くそばから、パラパラ舞うチョークの粉。


何で、何も変わんないんだろう………?
祐樹がもう、いないのに。
何で、世界は変わらぬまま続くんだろう………?

誰にも答えれないだろう疑問だけを、いたずらに反芻しながら、時が過ぎるのをひたすら待つ。

やっと下校時刻になり、
わざとゆっくり帰り支度をして、みんなが帰っていくのを見送った。


予定は、ない。

もう、見舞いに行くことも、ない。


自分の歩くべき歩幅を掴めないまま、力の入らない指先で、必死にカバンを持ち、歩いていたら
………渡り廊下に、智くんがいた。


「待って、いたんだ」


ふわり、と微笑んで、智くんがスッ、と音もなく俺の隣に並んだ。

無言で昇降口に向かい、靴を履き替えるために一度別れ、外で落ち合い、駐輪場へ向かう。

いつか、と同じ流れ。


「さ、とし、くん」


声出すのも一週間ぶりかのような、情けないか細い声で呼んだ。


「なぁに?翔くん」


さっき喋っていた話しの続きを訊くように、智くんが応えた。


「せ、線香………あげてもらえないかな?………ゆ、祐樹、に」


そんな行為に意味があるのか、高校生の俺には分からないけれど。
何かしてあげたかった。

………誰のために?

もしかしたら、俺自身のために。


「ん。いーよ。
俺も、行きたいと、思ってた」


智くんがそう言って、自転車を引っ張り出した。


「2ケツ、してく?」


「うん」


「飛ばして、へーき?」


「うん」

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えりんこ(プロフ) - あひるさん» あひるちゃん、こちらにもいらしてくれたのね(TT)ありがとうね。時間のあまり取れない中、お付き合いいただけたのがありがたく嬉しくです。こちらの翔さんは優しさ6割 賢さ3割 残念さなキュートさ1割で生成されていますので。笑。何がので、やねん。本当、感謝感謝感謝 (2017年5月15日 15時) (レス) id: 0428e73e41 (このIDを非表示/違反報告)
あひる(プロフ) - 結末を知っているからこそなのか、3人が幸せそうに声をあげて笑っているシーンでボロボロ泣いている自分。どうするの明日の顔。翔さんは優しいな。大野さんが告げた真実で、大野さんの孤独を想うんだから。 (2017年5月15日 0時) (レス) id: bcdb6e0c35 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - いなばさん» 作品を作れるように努力したいです!←心意気だけは立派?笑。ありがとうございました! (2015年9月11日 23時) (レス) id: 5c7989ada0 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - いなばさん» で黒、白作っちゃったから、ちょっとガタガタな感は否めませんが。それにしても、こうして懇意にしていただいて、すごくすごく書き手していて良かったと思えます!いなばさんとの出会いにも本当感謝!贅沢にツクを楽しめています。いなばさんをきゃーきゃー言わせる (2015年9月11日 23時) (レス) id: 5c7989ada0 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - いなばさん» いなばさん〜!!こちらにも、ありがとうございます!今思うと、策に溺れた感があって(笑)黒、白→灰色って読み進めないと灰色の出だしから話しに入っていくのに本当に一苦労するんですよね〜。←他人事みたい。3つが独立しても楽しめたらいいな、と思って灰色ありき (2015年9月11日 23時) (レス) id: 5c7989ada0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月28日 20時

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