拾ってください【短編集】【BL】 (ページ44)

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moonletter-2 ページ44

眠って、目が覚めたら、会うのかな。他のメンバーもいるのかな。
柵に肘をつき、手に顎を乗せ、ぼんやりと夜空を眺める。
こんなに苦しい思いするんなら、初めから出会わなければ良かったのかな。恋をするんならもっと、望みのある人にすれば良かった。
でもきっと、職業柄叶うこともないし。
一体どうすれば正解だったんだろうか。もう、いっそのことやめてしまおうか。何もかも、全てを。
あいつに恋をするのも、アイドルでいることも、全部。
でも、考えとは裏腹に、行動することなんてできなくて。
やっぱり俺は意気地無し。臆病者。
昔なら、誰に嫌われたって構いやしなかったし、誰かのために自分が折れるなんてしなかった。気持ちいいくらいに、自分主義。
恋をすると人が変わる。なんてどこかで聞いた言葉。
ほんとだったんだ……なんてぼんやりと思う。
今までだって、誰かを好きだと感じたことは少なくともあった。
あったけど、ここまでになるほど好きになっていたのは初めてで。
届かない。そうわかっていながら、ぽつりと呟く。
「…月が綺麗ですね」
「そうですね。今ならきっと……」
独り言。そう、全部独り言。1人で喋るなんてばかみたい。どんだけ寂しい奴なの。
胸の中にある"真実"の想いは、"虚偽"にしなければならない。
この世界はそういう『世界』
普通を否定して生きていく。普通を求めて、普通を嫌って、普通を……。終わらない話だ。
そんなものに乗っかってしまっている自分がもっと嫌になる。
何度も同じ考えを巡らせて、終わりを遠ざける悪い癖が出る。
はぁ、と一息ため息を吐けば、ポケットに手を突っ込み、ケータイを取り出す。
カチッと言う音を鳴らして、画面が明るくなれば、軽く画面をタップする。
開かれた画面を見ながら、手に持ったケータイを上に翳し、また画面をタップする。
カシャッという軽快な音をたてながら、その景色は切り取られるように、映った。
スイスイと操作をして違うアプリを開けば、さっき撮った写真を送って、月が綺麗だったよ、と打つ。
伝わらなくていいから、不毛な恋でいいから、好きでいさせて。
ずっと、見上げたら綺麗に輝いていて。