拾ってください【短編集】【BL】 (ページ37)

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Lover【Sn 桃×緑】ページ37

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まるで君はシンデレラ。
12時を過ぎれば、どんなに引き留めようが帰ってしまう。
またね。ってキスして、微笑んで。振り返らないで、そのまま暗闇の中へ行ってしまう。
仕方ないよね。好きになった方の負けだもの。どれだけ俺が好きって言ったって、返してくれやしないし。君からくれるものは何もない。俺ばっかり好きみたいで、心の中が寂しいと言う感情と焦りで蝕まれる。"寂しい"と思っても、その気持ちに蓋をして、見ないふりをする。
だって、言葉にしたって、聞き入れてくれるわけでもないのだから。

「あーあ、また今日も」

"言えなかった。"その言葉すら、口に出すのを躊躇ってしまう。
『臆病』『意気地無し』そんな言葉が頭を過ぎる。
知ってるよそんなこと、もうとっくの前に自覚してる。

「こんな曖昧な関係のままなんていられるわけないよ……。
はっきりしてよ…ねぇ……。」

ぽつりと呟いた言葉は虚しく消えていって。頬には涙が伝う。

シンデレラだと言うのなら、ガラスの靴でも残していってよ。
12時で消えてしまわない特別な魔法を。

もし、君が12時になっても帰らなかったら？
シンデレラじゃなくなったら？
俺と付き合ってくれる？
ほんの少し、冗談を織り交ぜて、悪ふざけのように、大好きって言っても許される？

…むりだ。むり。
そんな勇気も無いし、第一、君が"シンデレラ"じゃなくなることすら無いに等しいのだから。
どれだけ長く君と居ようと、君はシンデレラであり続ける。
ガラスの靴をのこさないシンデレラ。