拾ってください【短編集】【BL】 (ページ27)

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"くうそう"ゆき Part.1【Sn 黒×緑】ページ27

(mmside)

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"あの列車に乗って逃げちゃおっか"
暗闇の中で光る月に照らされて君が微笑む。
こんなこともあったな、いつだっただろうか。

自分と年齢もそんなに変わらない彼が自分に向けて言った言葉。今でも覚えてる。
だってできるものならしたいから。

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まだ子供だった僕たちは、大人達に縛られた世界を窮屈に思ってた。
自分のやりたいことを否定され、交友関係も制限された。けれど、縛られたままじっとしていられるような性分でもない僕たちは、大人達の目を盗んでは抜け出してた、僕たちなりに。
でも、どうやったって、大人と比べたら子供はまだ未熟だから、完璧に抜け出すことなんて出来なかった。
そう、大人達は知ってて僕たちを見逃してたのだ。
そのことが悔しくて悔しくて、でもどこかで諦めてた。ああ、やっぱりな。って。
それでも、君は諦めなかったんだ。大人や、他の人からしたら諦めればいいし、しょうもない話だけど、少年の心、っていえばいいのかな？忘れなかったみたいで。僕は突き動かされたんだ。
それからは、ずっと一緒にいて。依存してるってわかってたし、おかしいってわかってたから離れるのも自然だった。

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大人になった今、君はどこで何しているだろうか。今でも、昔のように声をかけてくれるだろうか。一緒にいて、遊んでくれるだろうか。
頭に浮かぶ数多の疑問は彼には届かないだろうけど、俺は待ってる。

僕らが創ったあの"くうそう列車"で。

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瞳を閉じる。すると、瞼の裏には小さい頃の僕らが映る。自分たちが創り出した、空創の列車を見つめてはさらなる想像を膨らませていた。
未だに覚えているその情景。
今でも君と乗れるかな。
隣の君に問いかけてみる。

「あの列車、覚えてる？」

再会して初めての言葉がこの二言。普通なら「久しぶり」とかだろうけど、俺はこの二言だけ。
大声で笑ったあと、瞳を潤ませ、笑顔で答える君。

「もちろん」

「今でも一緒に乗ってくれる？」

「もちろん」

さっきからもちろんしか言わない君。でも、この「もちろん」が最上級の肯定の言葉だって俺は知ってる。だから、答えを知っているけれど、また、質問を投げかける。

「じゃあさ、この列車に乗って逃げちゃおっか」

いつか、君が俺に言った言葉。今でも覚えてるよ。って思いを込めて微笑む。
そしたら、君も微笑み返してくれて、分かっていた答えを言ってくれた。

「もちろん」

れんとなら何処へでも。

というおまけ付きで。