ありきたりのラブ・ストーリー 2《Sato Shori》 (ページ7)

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冬 5 ページ7

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俺が手を貸して立とうとしたけど
足に力が入らないみたいで立つこともままならない。

俺が抱き上げてベッドに座らせると
少し気まずそうに申し訳なさそうに呟いた。

「ごめん黙ってたんだけど…
私長いこと寝たまんまで、筋肉も弱っちゃったみたいなの
流石に歩けるとは思ったんだけど…ごめん」

そんなにAの体は弱っていたんだ。

俺は首を横に振った。

「先生は車椅子で行けっていうんだけど
そんなの目立つしデートじゃないみたいじゃない？

だから…嫌なんだ」

暗い顔をするA
そんな顔しないで。初めてのデートでしょ？

「俺がおんぶしてあげるよ。お姫様抱っこでもなんでも、してあげる。
だから、Aは安心して。」

俺は照れを隠しながら言った。
するとAは俺の大好きな笑顔で笑った。

久しぶりに見た、君の全速力の笑顔。

「せーの……よっ、と」

Aをおぶって病院を出る。

「うわぁ～雪久しぶりに生で見た」

そんなことを言ってはしゃぐA

俺は彼女を後ろに乗せて
ヘルメットをかぶった。

「しっかりつかまっててよ？」

「はーいっ！！」

俺は病院から少し遠い
綺麗な灯台がある、海辺にきた。

近くに小さなレストランがあって、

そこでまず食事をする。

俺がAをおぶって中に入ると
怪我でもされたんですか？と店員さんが親切に尋ねてくれた。

彼女は笑って

「歩くの苦手なんです」

と言った。
きっと、彼女なりのジョークなんだろう。

戸惑う店員さんをよそに
席についた彼女は嬉しそうにメニューを開いた。

久しぶりにご馳走食べる～とはしゃいでる。

幸いあまり食事制限がないらしい。

少しして運ばれてきたパスタを
嬉しそうに写真に撮って食べ出す。

彼女とこうしてデートらしいことをするのは
初めてで、嬉しくて、

ずっとこうしていられたらと思った。

食事を終えて俺らは海辺に行った。

少しこの上の山を登ると星が綺麗なんだ。
よく、家族で夏に来てて、

好きな人と行きたいとお兄ちゃんに言ったら

海辺の星空なんか、ド定番だぞ？と笑われた。

いいんだよ、ド定番でも。

彼女といられたらどこでも、いいんだ。

「山、ちょっと登ってみない？」

「いいよ。私重いよね、ごめんね？」

「全然重くないけど。」

俺がそう言うとクスクスと笑って
おじょーずですね。と言った。