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「あの後、みんなで考えたんです。
どうしたら至さんを引き留められるか…」
咲也は俺の目をまっすぐ見て言葉を発する。
純粋に、ただただまっすぐ俺を見つめるその目を逸らすことなんて出来ない。
「オレたちが演技で至さんを本気にさせてみせます。
一緒にやりたいって思って貰えるように。
だから、一緒に舞台に立ってください。
オレたちの事、信じてください!お願いします!」
「咲也……すっかり座長っぽいな」
「え?」
年下に、しかも高校生にここまで真っ直ぐぶつかってこられて、俺がうだうだと我儘を言い続けるなんて出来るわけないよなぁ
「分かったよ。とりあえず、ロミジュリまではやってみる。」
「本当ですか!?」
「ああ」
まだ本気になれるかなんて分からない。
だからロミジュリまで。
それでも咲也達は俺のその返事に大袈裟なくらい喜ぶ。
「……あの、至さん」
恐る恐る、様子を探るようにAちゃんが声をかける。
その視線はキョロキョロと落ち着きなく動いている。
「昨日は、その、すみませんでした。
……一方的に怒鳴ったりして…」
「Aさんも、至さんが居なくなるのは寂しいって思ってくれてたんです!」
Aちゃんが俺に向かって頭を下げて謝る。
それをフォローするように咲也が声をあげる。
……いつの間に名前で呼ぶようになったんだか、咲也達とは随分打ち解けたようだった。
「元はと言えば俺のせいだし、顔上げてよ」
「……」
渋々といった様子で顔を上げるAちゃんとは未だに視線が合わない。
「俺もごめん。勝手に決めて謝って、逃げるみたいなの、卑怯だった」
「…ロミジュリ、終わるまでは居てくれるんですよね」
俺が謝ると、ようやくAちゃんと視線が合った。
俺の目をじっとみつめたままAちゃんは尋ねる。
「うん。そう言ったよ。
そこから先はその時また考えることにするよ、」
「……ロミジュリ終わったら、私もちゃんと話します。……みんなにも。」
俺とAちゃんの会話を聞いていた皆もある程度事情は知っているようだった。
Aちゃんの抱えるものがなにかなんて分からないけど、この皆でならなんだって受け止められるような気がする。
まっすぐ向き合ってくる皆でなら。
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hana0218(プロフ) - 続き気になります!更新頑張ってください! (2020年3月18日 9時) (レス) id: be339afaa3 (このIDを非表示/違反報告)
翔子 - 続き楽しみにしてます! (2020年1月9日 2時) (レス) id: 130af08cdc (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2019年12月19日 6時) (レス) id: b527f3a894 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばこっく | 作成日時:2019年12月19日 3時