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夏祭り当日。
去年より大人っぽい浴衣を着て軽く髪を整える。
慣れない下駄を履いてほんの少しだけ憂鬱な気分で待ち合わせ場所へと向かった。
『……お待たせ』
そう言いながら彼の目の前にいくと至近距離で目が合って。
そんな彼はどこかぎこちなく「お、遅かったな」と言った。
そう、今私の目の前にいるのは濱ちゃんではなく。
この間一緒にお祭りに行くのを断固拒否した大毅。
実はあれから私は濱ちゃんと時間がすれ違ってなかなか話せなくて。
そんな私を見かねた大毅にしつこく「じゃあ俺と行けばええやん」と言われてしまい。
最初は"絶対行かへん"と思ってたけど、あまりにもしつこい大毅に思わず了承してしまった。
すると隣から大毅の「あ、あのさ」なんていうぎこちない声が聞こえてきて。
なるべく大きい声で「なに?」と言えばなぜか口ごもる大毅。
「ゆ、浴衣…似合ってる」
『ごめん、聞こえへんかった…なんか言った?』
顔を赤くして何かを言った大毅やけど、お祭りの音がうるさすぎて何も聞こえない私。
そっと大毅に聞き返せば「やっぱ何でもない」と言われてしまった。
.
お祭り会場に入れば去年よりも増えている屋台。
こんなに人がいたら濱ちゃんも見つからんやろうなぁと少し残念な気持ちになった。
「なぁ、あそこの射的で負けた方がりんご飴奢りゲームしようや」
『何その庶民的なゲーム』
そんな私の言葉を無視して「ええやんええやん」と言いながら射的に向かう大毅。
たまには対決もええか…なんて思った私は大毅の後を追いかけるように走った。
あれから熱戦を繰り広げて勝ったのは私。
珍しく本気勝負をしたせいかいつもの何倍も勝ったときの喜びがすごかった。
「お待たせ」なんて言いながらりんご飴を手渡してくる大毅からそっとりんご飴を受け取る。
「ほんまお前射的強すぎんねん」
『へへっ…大毅が弱いだけ……』
そんな大毅の言葉に言い返そうとした私は途中で途切れてしまった。
一番見てはいけないものを見たような、そんな感じがした。
濱ちゃんが…女の人と手を繋いで歩いている。
その事実を突きつけられた瞬間、手に持っていたりんご飴を床に落としてしまった。
あんな楽しそうに照れくさそうに笑う濱ちゃん見たことない。
アスファルトの上に落ちたりんご飴はとても綺麗な真っ二つに割れていた。
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りってぃ(プロフ) - まるまるさん» 初めまして。コメントありがとうございます('ω')一気に読んでくださったんですね、もうすごく嬉しいです。夏にしたい青春にきゅんきゅんしていただいて何よりです。今絶賛公開中なので、ぜひ新作も見に来てくださいね。 (2018年9月28日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
まるまる - 完結おめでとうございます!読んでいて楽しくて一気に最後まで読んでしまいました..!夏ならではの青春が詰まっていて我ながらキュンキュンしました..、新作も読ませていただきますね! (2018年9月28日 0時) (レス) id: b9fcf0c55a (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - もちこさん» 初めまして。コメントありがとうございます('ω')更新を待ってくださったのも嬉しいですが、何より素敵なご感想を書いていただけたことが一番嬉しいです。どきどきしていただいてとても励みになります。新作もそろそろ公開予定なので、貴重にお待ちくださいね。 (2018年9月22日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» こんにちは。コメントありがとうございます('ω')色んな意味できゅんきゅんだなんて…物凄く嬉しいです。こちらこそありがとうですよ。実は私も重岡さんのお話が一番お気に入りなんです。新作もそろそろ公開するので、貴重にお待ちくださいね。 (2018年9月22日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ - りってぃさん、完結おめでとうございます…!ひっそりと更新を楽しみにしておりました、どのお話もどきどきしてすごいなぁと感心させられました…!新作も楽しみにしています! (2018年9月22日 9時) (レス) id: 4aed13764d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2018年8月21日 17時