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絡まった足を動かせば動かすほど身動きが取れなくなって。
私の体はどんどん海の中に沈んでいく一方。
『た、助けっ…誰か……!』
そう言った瞬間、体全体の力が抜けて。
力が抜けた私はどんどん海の中に沈んでいった。
あぁ…私の人生終わった。
もう太陽も空も何も見えなくなって…深いところまできたんやと実感した。
そんなことを思った瞬間、突然海の中の水がばしゃっと跳ねて。
誰か海の中に入ってきたんかな…とぼーっとする意識の中でそう思った。
あれ…何で藤井先輩がここに?
途切れかけた意識の中でそっと目を開ければ必死な顔で私を見つめる藤井先輩がいた。
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目を開くと目の前に広がる見たことのない天井。
嗅いだことのある独特な匂いからここが病院ということが分かった。
私を見た看護師さんは「助かって良かったわね」と嬉しそうにそう言って。
あれ…そういえば私何で病院におるんやろ?
海の中で溺れて沈んで…そこからどうなった?
必死で思い出している私に看護師さんは「あのね」とそっと口を開いた。
「あなたが沈んでいったときに男の子が勢いよく海に飛び込んで。
深い海の中から必死であなたのことを引き上げてくれたんよ。」
そう言った看護師さんは「優しい男の子で良かったなぁ」と微笑んでいて。
その言葉に私は真っ先に藤井先輩のことが頭に浮かんだ。
「でも…そのときに男の子も結構体力使ってもうたみたいで。
まだ男の子目が覚めてへんみたいやけど大丈夫かなぁ。」
そんな看護師さんの言葉を聞いて私は慌てて自分の病室を飛び出した。
あかん、そんなあかんって…藤井先輩がいなくなるのだけは絶対嫌やって。
看護師さんに藤井先輩の病室を聞いて慌ててその病室へと向かう。
がらっと病室のドアを開ければ、ベッドに寝転んでいる藤井先輩と目が合った。
「あ、Aちゃん」
そう言って微笑む彼は相変わらずチャラくて。
いつもの私の大嫌いな藤井先輩だった。
いつの間に目を覚めていたのか私はそんな藤井先輩に勢いよく抱きついた。
『良かった、先輩が生きてて…本当に良かったっ』
そう言って泣きじゃくる私の頭をぽんぽんっと撫でてくれる藤井先輩。
そんな藤井先輩も「俺もAちゃんが無事で良かったわ」と呟いた。
優しく微笑む先輩にどきどきする私は…もしかしたら先輩に堕ちてしまったのかもしれない。
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りってぃ(プロフ) - まるまるさん» 初めまして。コメントありがとうございます('ω')一気に読んでくださったんですね、もうすごく嬉しいです。夏にしたい青春にきゅんきゅんしていただいて何よりです。今絶賛公開中なので、ぜひ新作も見に来てくださいね。 (2018年9月28日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
まるまる - 完結おめでとうございます!読んでいて楽しくて一気に最後まで読んでしまいました..!夏ならではの青春が詰まっていて我ながらキュンキュンしました..、新作も読ませていただきますね! (2018年9月28日 0時) (レス) id: b9fcf0c55a (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - もちこさん» 初めまして。コメントありがとうございます('ω')更新を待ってくださったのも嬉しいですが、何より素敵なご感想を書いていただけたことが一番嬉しいです。どきどきしていただいてとても励みになります。新作もそろそろ公開予定なので、貴重にお待ちくださいね。 (2018年9月22日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» こんにちは。コメントありがとうございます('ω')色んな意味できゅんきゅんだなんて…物凄く嬉しいです。こちらこそありがとうですよ。実は私も重岡さんのお話が一番お気に入りなんです。新作もそろそろ公開するので、貴重にお待ちくださいね。 (2018年9月22日 15時) (レス) id: b7b6eb2e08 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ - りってぃさん、完結おめでとうございます…!ひっそりと更新を楽しみにしておりました、どのお話もどきどきしてすごいなぁと感心させられました…!新作も楽しみにしています! (2018年9月22日 9時) (レス) id: 4aed13764d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2018年8月21日 17時