夏 の 合 図 ≪ J.WEST ≫

神山智洋 / 扇風機のような恋 ページ1

最近はとてつもなく暑い。

外を歩けば汗でびちょびちょ、家にいても暑くて溶けてしまいそう。






『あぁ〜〜、暑いぃい〜〜』



机に伏せながらそう呟く私は多分人生で一番暑いと言っても過言ではない。

教室に入ってもこんなに暑いとは…夏恐るべし。






「別にそこまで暑くないやろ〜」


『げっ…寒がり淳太』



私の目の前でそう言った淳太に嫌がるようにそう言えば

「そこまで寒がりちゃうから」と冷静につっこまれてしまった。




淳太こと中間淳太は席が前後だからか最近仲良くなったクラスメイト。



私が「暑い」と連呼する度に「暑くないやろ」って言ってくるから

私の中の淳太のあだ名は"寒がり男"に進化しつつあった。





『あぁあ…暑い……』


「水飲めば？」



『そういう問題ちゃうねん！』


「じゃあどういう問題やねん」



私の一言にしっかり食いついてくる淳太は相変わらずで。

淳太の暑苦しいつっこみのせいで余計に暑くなってしまった。





いつも下ろしている髪も暑さに耐えられずポニーテールにしたし

いつもは膝下まで下ろしているスカートも暑さのせいで太ももぐらいまで上げたっていうのに。



暑さは全く変わらんやないか。

むしろ…日に日に暑くなっている気がする。







そんなことを思っていると突然教室のドアががらっと開いて。

ちらっとドアの方を見れば「みんなおはよ」と言いながら神山くんが教室に入ってきていた。



そんな神山くんは仲良くしている友達数人に挨拶をすると

がたっと音を立てて私から大分遠い席に座った。






ふふっ…今日も神山くんかっこいいなぁ。

そんなことを思いながら朝の支度をする神山くんをぼーっと眺める私。





神山くんは頭も良くて学級委員も生徒会委員もやっていて。

かっこいい容姿からか女子にもモテる神山くんは私にとって憧れの存在。



別に特に仲がいいわけでも話したことがあるわけでもなく

暑いのが大の苦手の私が神山くんを見れば少し心が涼しくなるというだけの話。







「また神ちゃんのこと見てる」


『神山くんは私にとって目の保護やわ』



「話しかけたらええやん」


『私は神山くんが見れればそれでええねん』



どこか不思議そうにそう言う淳太に慌ててそう言った私。

そんな私はまた神山くんの方をじっと見つめた。






やっぱり神山くんは私に涼しさを与えてくれている気がして。









私にとっての神山くんは"夏の天使"のような気がした。

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