極 悪 ヤ ン キ ー ３ ≪ Daiki.S ≫

極悪125. ページ28

私たちの悪夢はまだ終わっていない。

桐山組から解放されたように見えるが本当は何も解決していない。



その事実を受け止めようとしたとき、言葉では言い表せない不思議な気持ちになった。









『どうするべきか……』



片手にスマホを持ちながら病院に入ればいつもより人が少ないような気がして。

ゆっくりと重岡の病室へ向かってドアを開ければなぜか重岡はいなかった。







あれ、珍しいな。

重岡が病室にいないなんて今まで絶対になかったのに。



看護師さんに不機嫌な態度を取ってるみたいやし病室から出ることはありえへんねんけど。









何なん、わざわざ"今から行く"ってメール送ったのに。

お手洗いにでも行っているのだろうか。






少し疑問に思いながらしばらく病院内をウロウロしていると見覚えのある姿が目に入ってきて。

慌てて確認すればそこにいたのは重岡と…濱田さんだった。




この間私と濱田さんがゲームをした場所、そして重岡と濱田さんが揉めたあの場所だ。

私にとってはトラウマといっても過言ではない場所で二人はなぜかカードゲームをしていた。









『こんなところで何してるん』


「誰かと思ったらお前か」



私の言葉にちらっとこちらを見た重岡はだるそうにカードゲームをしていて。

目の前にある大きな窓から聞こえてくる雨音に少しどんよりとした気持ちになった。





何なん、せっかくお見舞い来たのに。

いつもと同じ態度のはずなのにほんの少しだけ寂しく感じるのはなぜなのだろうか。









「Aさんもします？」


「こいつは弱いから無理や」



優しく声をかけてくれた濱田さんに重岡はあっさりそう言って。

"えぇ？でもこの間ちょっとだけ勝負したとき結構強かったっすよ？"と言った濱田さんはなぜかとても楽しそうだった。




濱田さんの顔つきはこの間と比べて明らかに変わっていた。

私とカードゲームしていたときとは違う、清々しい何か変わったようなそんな顔をしていた。









『あんたらいつの間に……』



ヤンキーの世界とは本当に謎ばかりだ。

私はカードゲームをする二人をしばらく見つめていた。









≪ なぁ、これってたかぴょんが狙われてるってことやんな…… ≫









楽しそうに笑う濱田さんにそんなこと言えるわけがなかった。









私は桐山組のことを心の奥に隠したまま目の前の二人に笑みを浮かべた。

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