ハウス54. ページ10
あれから授業が終わったころにはもう神山くんはいなくなっていて。
いつの間に帰ってたんや…と思いながら鞄の中に荷物を詰めていると後ろからトントンと肩を叩かれた。
『あ、神山くん…急におらんくなったからもう帰ったと思って……』
「はい！これ！」
走ってきたのか少し汗ばんでいる神山くんは笑顔で缶ジュースを渡してくれて。
"この間のお礼、受け取って"と言って微笑んだ神山くんに思わず笑みが零れた。
『わざわざ自動販売機まで買いにいってくれたん？』
「この間の一万円まではまだまだ程遠いけどとりあえずのお礼ってことで…」
…そんなこといちいち気にしなくてもいいのに。
どこまでも律儀な神山くんにまた笑みが零れてしまった。
.
あれから私と神山くんは途中まで帰り道が同じだということが判明して。
"誰かと帰るなんて久しぶり…"と言いながら私の隣を歩く神山くんにまた笑みが零れた。
『神山くんにちょっと相談したいことがあるんやけど……』
「え！聞きたい！」
せっかく友達になったし…と思いながら口を開けば神山くんは前のめりで私の話を聞いてくれて。
こんなに誰かに話を聞いてもらうのは久しぶりで少しだけ嬉しくなる自分がいた。
『実は来週友達といちご狩りに行くことになったんやけど』
『そのいちご狩りに友達のご両親も来るらしくてさ』
ここは一応"友達といちご狩りに行く"ということにしておこう。
…同居してるって言ったら話がややこしくなるし。
私の話に笑顔で相槌を打ってくれる神山くんは今にでも私の悩みを解決してくれそうな気がした。
『実はそのご両親が私の彼氏のご両親でもあって……』
「……え？彼氏？」
『こういうのってやっぱり"彼女です"ってきちんと挨拶した方がええんかな？』
「あ、あぁ……」
私がそう言った瞬間なぜか悲しそうな顔に変わっていった神山くん。
そんな神山くんに余計なことを言ってしまったのだろうか…と不安になってしまった。
「…安藤さんの思ったようにやればええと思う」
『やっぱりそうやんな！話聞いてくれてありがとう！』
微妙な笑顔を浮かべながらそう言った神山くんに一気に安心した気がして。
もう一度"ありがとう！"と言えば神山くんは"いえいえ"と言いながら苦笑いを浮かべていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 719人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブラックな少女 - 始めまして、笑いあり、ドキドキありの、お話で面白かったです！個人的に流星くんがすきでした！ (2022年8月7日 21時) (
レス) @page49 id: 3cbd83fd77 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - ちゃきさん» 初めまして(^^)コメント残していただき本当にありがとうございます…！そう言っていただき嬉しいです(:_;)面白かっただなんて…ありがたいお言葉ありがとうございます…！また機会があれば書こうと思っているのでそのときはぜひ見にきてくださいね(..)！ (2021年10月7日 16時) (レス) id: ccea52b7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちゃき(プロフ) - 初めまして！毎回更新されるのを楽しみにしていたので完結してしまったのが少し寂しいですが、キュンキュンできて本当に面白かったです！このシリーズはずっと読んでいられるのでまたいつか出るのを楽しみにしてます！ありがとうございました！ (2021年10月4日 22時) (レス) id: 29b8e7862d (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - manaさん» わわっ！そう言っていただきとても嬉しいです！(:_;)続編希望のお言葉まで本当にありがとうございます(..)続編の件ぜひ検討させていただきますね！また書くことになったときはよろしくお願いいたします！(';')** (2021年5月3日 11時) (レス) id: ccea52b7dc (このIDを非表示/違反報告)
mana(プロフ) - とても面白かったです！もし良ければ続編希望です！ (2021年5月3日 0時) (レス) id: be6f20fff2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りってぃ
| 作成日時：2021年2月21日 18時
