レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル08. ページ8

あれから私は早歩きで待ち合わせ場所へ向かって。

到着したときにはもうすでに重岡さんが待っていた。




私を見つけるなり優しく微笑んだ重岡さん。

そんな重岡さんは小さく手を振りながらこちらへ歩いてきた。









「来てくれへんかと思ってました」


『すみません、ギリギリになってしまって』



私の言葉に"また友達にレンタルされてもうたんですね"と言って微笑む重岡さんは物分かりがいいみたいだ。

優しく微笑む重岡さんにまた気まずい気持ちになってしまった。









「今日は場所指定はされてないんですけど…どこに行きます？」


『…あ、そうなんですね』



「じゃあ行きつけのお洒落なレストランに……」


『居酒屋がいいです、大人びたところじゃなくてホッと一息つけるような』



もうお洒落なレストランは懲り懲りだ。

どうせならもっとたくさん食べて飲んで色んなことを話せる場所がいい。









思い切ってそう言えば目の前の重岡さんは優しく微笑んで。









"じゃあおすすめの場所案内してください"そう言った重岡さんに私はゆっくりと歩き出した。









.



あれから私と重岡さんはサラリーマンがたくさんいる居酒屋に入って。

メニューを注文して待っている間も目の前の重岡さんはそわそわしていた。









「こういうところ久しぶりに来ました」


「なんか慣れないです、大体いつもお洒落な場所なので」



そう言って"えへへ"と微笑む重岡さんはきっとこういう場所に来ることはあまりないのだろう。

運ばれてきた料理に"おぉ、美味しそう"と言った重岡さんはおつまみを一口食べていた。









「Aさんはこういうお店が好きなんですか？」


『まぁ、はい……』



「どの料理が好きとかあります？」


『タコが入ってるやつはよく食べてます』



そう言ってにこにこ微笑む重岡さんはきっと会話をするのが上手なんだろう。

さすが一番人気なだけあるなぁ…と思った。









「あ、そういえばAさんと元カレさんどうなりました？」



そう言って微笑んだ重岡さんにまた違和感を覚えて。

その違和感にやっと気づいた気がして私は目の前の重岡さんをじっと見つめた。









『私重岡さんの笑顔嫌いです』








そう言った私に目の前の重岡さんは驚いたような顔をしていて。









何で自分でもこんなことを言っているのか分からないけどどうしても重岡さんに伝えたかった。

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