レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル38. ページ38

あれからもう一度玄関で靴を脱ぎ直したお兄ちゃんは家の中に入ってきて。

不安そうに見つめる桃花をお兄ちゃんは愛おしそうに見つめていた。









「…今さら何しにきたん」


「今までずっと連絡しようか迷ってた、けどやっぱり直接会いたくなって」



「じゃあなんで今まで何もしてこおへんかったん！！」


「本気で好きやから、本気で好きやったからどうしていいか分からんかった」



そう言ってまっすぐ桃花を見つめるお兄ちゃんは我ながらイケメンで。

お兄ちゃんの言葉にポロポロと涙を流す桃花に何だか私まで泣きそうになってしまった。









「本気で好きになった相手にはどうしていいか分からへんくなるねん」


「どのタイミングでハグしていいかとかキスしていいかとか本気で好きやったら全部分からんくなってもうて訳分からんことばっかりしてまう」



お兄ちゃんは芯がしっかりしている人だった。

それは私がこれから先経験するかどうか分からない世界だった。









「正直今も会いにくるか迷った、好きやから大事やからこれ以上傷つけたくないし嫌な思いさせたくなくて」


「やけど俺はどうしても桃花のことが好きや、傷つけてでもいいから会いたかった」



そう言って桃花を強引に抱きしめるお兄ちゃんをぼーっと見つめる。

目の前の二人は完全に絵になっていて何だか一人取り残された気分になった。









「どんな姿であろうと桃花は桃花やろ？」



そう言って微笑んだお兄ちゃんに思い切り抱きつく桃花。

"ごめんね"と何度も謝る桃花は今までで一番キラキラと輝いていた。






私は初めて両想いが結ばれる瞬間。

恋が実った人がキラキラと輝く瞬間を見た。



私にもそんな瞬間が訪れるのだろうか。









『お兄ちゃん、桃花ほんまにおめでとう』



正直胸が苦しかった。

誰かにあんなに愛されている桃花にほんの少しだけ嫉妬してしまった。




両想いって奇跡なんやな。

誰かからあんな風に想いを伝えられるのってどんな気持ちなんだろう。









≪ どうしても会いたかったんです、Aさんに ≫



そうだ、重岡さんは確かあんな風に気持ちを伝えてくれていたんだっけ。

こんな形で重岡さんのことを思い出してしまうなんて。









……重岡さんに会いたい。









気持ちが溢れてしまいそうになった私は慌てて桃花の家を飛び出した。

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