レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル30. ページ30

あれから一週間後。



淳太くんと約束していた火曜日になった。

時の流れはあっという間というのはまさにこのことだ。








…おかげで私はこの一週間全く仕事に集中できなかった。

課長にも"体調悪いんか？"と心配されるほど。



事あるごとに重岡さんのことを考えてしまって頭がおかしくなりそうだ。









『今日は淳太くんと食事に行って重岡さんのことは忘れよう……』



大丈夫、きっとキスのことはすぐに忘れられる。

あれから重岡さんと会うのが気まずくてレンタルするどころかレンタル彼氏のサイトすら開いていない。








ちらっと時計を見れば待ち合わせの30分前になっていて。









私は慌てて"お疲れ様でした…！"と言って会社を飛び出した。









.



私はあれからスマホの地図を見ながらお洒落なレストランへ向かって。

レストランの中に入れば店員さんが"こちらへどうぞ"と席まで案内してくれた。









「A、息切れてるけど大丈夫か？」


『はぁ…はぁ…遅れそうになってっ……』



「えぇ？まだ待ち合わせの10分前やから大丈夫やで？」


『淳太くん待ち合わせするときいつも早く来るからさ…待たせたら悪いと思って』



淳太くんは昔から時間にはきっちりしている人だった。

待ち合わせの30分前にはいつもいて。



私がギリギリになっても遅刻をしかけても絶対に怒らない。

"間に合ってるから大丈夫やで"と優しく笑うだけだった。









「懐かしいなぁ、この感じ」


『へへ、そうやなぁ』



「A、最近元気ないように見えるけど何かあった？」


『へ？何にもないで？』



一瞬身体がビクッとなってしまったのはきっと気のせいだ。

まさか淳太くんに見透かされていたなんて…こんな自分が情けなくなった。






ちらっとこちらを見た淳太くんは少し寂しそうに"そっか"と言って。

"何頼む？"と言いながらメニューを開いていた。









「このコースめっちゃ美味しそうやな」


『美味しそう〜、でも高くない？』



「よし、じゃあこれにしよか！」


『ええ！このコースめっちゃ高いで！』



そう言った淳太くんは店員さんに"すみません〜！"と言っていて。

私は余裕そうに注文する淳太くんをぼーっと見つめていた。









楽しい食事のはずなのに、楽しみにしていた食事のはずなのに。









どうしても頭の中から重岡さんのことが離れてくれなかった。

レンタル31.→←レンタル29.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す