レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル16. ページ16

あれから数日。



重岡さんとキャンペーンレンタルをした日から私は仕事が忙しくなって。

桃花と飲みに行く時間も重岡さんをレンタルする時間もなくなってしまっていた。









『ふぅ、ちょっと休憩』



朝からぶっ通しで仕事をしていたから疲れてしまった。

ゆっくりと席を立ち誰もいない給湯室でコーヒーを一口飲んだ。





スマホを開いてレンタル彼氏の画面を見る。

そこには重岡さんの名前が書かれてあって何だか変な気持ちになった。









『まさか私がこのアカウントを持つことになるとは……』



あの日から私はすぐに桃花に電話をして。

桃花の持っている私のアカウントを自分のスマホに移行してもらったのだ。




桃花には"頭打った？"とか"気変わったん？"とか散々言われたけど。

今思い返してみれば自分でもどうかしてると思う。









≪ どうしても会いたかったんです、Aさんに ≫



あれはレンタル彼氏の営業としての言葉かもしれないのに。

その言葉に浮かれている私は馬鹿なのかもしれない。



でも今はレンタル彼氏も悪くないなと思う自分がいる。









『しばらくは会われへんけど……』



とにかく仕事が終わるまでは会えない。

"またレンタルする"と言ってしまったから一度はレンタルしないと失礼だ。



自分で言ったことにはしっかり責任を持たないと。









「……Aやっと見つけた」


『あ、淳太くん』



"オフィスにおらんかったから"と言って給湯室に入ってきたのは淳太くんで。

あまりにも突然のことに少しだけ驚いてしまった。









「部長が資料のことで聞きたいことがあるって言ってて」


『分かった、すぐ行く』



そんな淳太くんの言葉に慌てて給湯室を立ち去ろうとすると後ろから"あのさ…！"と引き止められて。

"ん？"と言って淳太くんの方を見れば目の前の淳太くんはどこか気まずそうな顔をしていた。









「この間たまたまAと男の人が一緒に歩いてるの見てもうて」



"それって…その…彼氏なん？"と聞いた淳太くんはどこか余裕がない様子だった。

彼氏といえば彼氏なんやけど…それはレンタルしてるだけであって。









『ただの友達の友達でたまたま会っただけで…何もないで』








自分でも何でこんな嘘をついたのかよく分からない。









そんな私の言葉にホッとした顔を見せた淳太くんを見て私は慌てて部長の元へ向かった。

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