レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル36. ページ36

あれから私はデスクに頭を伏せて泣き続けて。

やっと泣き止んだとき"A、どうしたん？"という淳太くんの優しい声が聞こえてきた。





もしかしたら…重岡さんがレンタル彼氏をやめたのは淳太くんのせいかもしれない。

でも淳太くんはレンタル彼氏の現実を教えてくれた、あのとき重岡さんから助けてくれた。



何にも悪くない。

ただ正しいことをしてくれただけだ。









『重岡さんがレンタル彼氏やめたって』


「そっか、ならもう会われへんくなるな」



顔を上げることなくそう言った私に淳太くんはそう言って。

そんな淳太くんの言葉にどうしようもなく胸が苦しくなった。









『淳太くんはアプリとかで恋愛するのはあかんって思ってるかもしれへんけど』


『私にとってはそれが唯一の救いやってんっ……』



重岡さんはいつも私に笑顔をくれた。

落ち込んでいたとき、楽しいとき、悲しいとき。



そんなとき目の前にはいつも重岡さんがいた。









『一緒に笑ったり話したり悩みを聞いてくれたり励ましてくれたり』


『…重岡さんといるとどうしようもなく幸せな気持ちになるねん』



だめだ、私。

せっかくいい感じになっていた淳太くんにこんなことを言ってしまうなんて。









『真っすぐな目とか…嘘が全くない心から笑った顔とかっ……』


『全部全部忘れられへんくて…何をしてても頭の中から離れへんくてっ……』



忘れられなくて頭から離れなくて。

でも思い出す度に胸が苦しくなった。









『お金を払っててもそれが仕事でもこんなに幸せになれるんやったら結果ハッピーやん？』


『やから…レンタル彼氏も素敵な仕事やと思う……』



みんなが笑って幸せになる。

間違いなく私もその中の一人だった、レンタル彼氏が私を変えてくれたんだ。









「……そっか」



私の言葉にただそれだけ言い放った淳太くん。

そんな淳太くんは私のデスクにコトッと何かを置いて去っていってしまった。









ゆっくりと顔を上げれば目の前にあったのは私がいつも飲んでいるカフェオレだった。

私の大好きなカフェオレだった。









『ごめんっ…淳太くん…ごめんなさいっ……』









私は淳太くんを傷つけてしまった、裏切ってしまった。









喉に流し込んだカフェオレは甘くて苦くて私の大好きで仕方ない味がした。

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