レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル20. ページ20

時間がない、私には一秒だって手を止める時間なんてない。

淳太くんと食事に行ってる時間だって彼氏をレンタルする時間だってない。









『…なんで人が仕事してるときにそんな話するん』


「やって誰もおらんときしか話せる時間ないし」



『…それやったらメールとか電話なりすればええやん』


「メールしてもいっつも曖昧な返事しかせえへんやん、先延ばしになるやろ」



仕事のストレス、寝不足、あれもこれもしなきゃいけないという責任感。

色んなものが一気に重なってどうにかなってしまいそうだった。









『なんで！！必死で仕事してるのに邪魔するん！！』


「俺はただ食事に行きたいって話しかけただけやん…何で怒られなあかんの？」



もう何もかもが嫌になった。

仕事だって淳太くんだって…自分だって。



気づけばポロポロと涙を流していた。









「何でいっつもそうやねん」


「別れてまでこんな喧嘩したくないわ」



そう言って頭を掻く淳太くんに胸が苦しくなって。

私は溢れ出てくる涙を服の裾で拭った。









「そうやって俺と言い合いした後はいっつも泣いてさ…結局泣いてる理由は分からへんまま」


「そういうところが嫌で俺はAと別れてん」



そう言ってこちらを見つめる淳太くんに胸が押しつぶされそうになって。

目の前の淳太くんは小さな声で"なんで……"と言っていた。









「なんで！！言うてくれへんねん！！」


「辛いこととか悲しいことがあったらいつも俺に当たるだけ当たって結局なんで腹が立ってるんか全然分からへん！！」



そう言った淳太くんは今まで溜め込んでいた思いを吐き出しているかのようだった。

きっと淳太くんをここまで溜め込ませたのは私なんだろう。









「助けてほしいなら"助けて"って言えばええやんけ！いつまで強がってるねん！！」


「Aと言い合いした日はいっつも惨めな気持ちになる、"あぁ、俺って頼りないんやな"って"相談もされへんねんな"って思う」



そう言った淳太くんにまた涙が一つ流れ落ちて。

そんな自分が嫌になってまた涙が溢れ出てきた。









「俺はAのストレス解消アイテムじゃないねん！！」









そう言った淳太くんは勢いよくオフィスを出ていってしまって。









一人取り残された私は淳太くんの言葉が胸に刺さってしばらく動けなかった。

レンタル21.→←レンタル19.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す