執事41. ページ41
あれから私はどのぐらい泣いたか分からないぐらい泣いて。
何もすることなくただドアの前でうずくまっていた。
「A、夕食の時間やで」
『今日は食べる気分じゃない』
ドアの外から聞こえるお父さんの声。
そんなお父さんは"体調悪いんかなぁ"と言いながらリビングへ行ってしまった。
ふと時計に目を移すともうあっという間に夜になっていて。
ゆっくりと立ち上がれば窓の外からはキラキラと星が輝いていた。
『うわぁ、綺麗』
重岡もどこかでこの星を見上げていたりするのだろうか。
ぽつりと空いた大きな穴はなかなか埋まってくれなかった。
.
あれから何もする気が起きなくて。
ただドアの前でうずくまるだけ。
時間が経っても心の傷が癒えることはなかった。
「A様、よろしいでしょうか」
『な、何しにきたん……』
ドアの向こうから神山の声が聞こえて。
慌てて立ち上がれば"安心してください、中には入りませんから"という声が聞こえてきた。
そう言った神山はドアの向こうで座り込んで。
ドアを挟んだ向こう側に神山が座っている…そう思った。
「しげはA様のことを思ってここから去ったんですよ」
「A様のことを嫌いになって出て行ったということは絶対にありません」
神山の優しい声が聞こえる。
神山の声はいつも以上に優しくて温かかった。
『違う…私がひどいこと言ってもうたからだからそれで……』
「しげあの後泣いてました」
『……え?』
「"結婚するなんて知らんかった"って"教えてくれへんかったのが悲しい"って
そして何より"A様が結婚することが嫌や、苦しい"って言ってましたよ」
神山の言葉に息がしづらくなる。
なんで…私そんなこと知らない……重岡が泣いてたなんて。
「でも"A様には幸せになってほしい"って"俺が邪魔しちゃいけない"って」
「"それに結婚したら俺はもう必要ない"って言って出て行きました」
そんな神山は"私もそろそろこの仕事辞めないといけないですね"なんて言っていて。
せっかく引っ込んでいた涙がまたポロポロと流れてきた。
「大丈夫です、A様ならきっと幸せになれます」
ずるいよ、ずるいよ重岡。
"結婚式楽しみにしてます"なんて声が聞こえてくる中私は静かに涙を流した。
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りってぃ(プロフ) - のんさん» そう言っていただき本当に嬉しい限りです(T_T)全部作品読んでくださるなんて本当に嬉しいです、のんさんも無理しない程度に作品読んでくださいね(;_;)!お気遣いありがとうございます、これからも頑張ります!(^^) (2020年10月20日 19時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです(;▽;)一気にファンになりました。今からりってぃさんの全作品読んできます!無理なさら無い程度でいいのでこれからも楽しみにしています!お身体にお気をつけてお過ごしください (2020年10月20日 13時) (レス) id: dc321bd858 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» やさきみさん!(T_T)いつもコメントいただいて本当に励みになってました、再開してからも早速コメントいただいて本当に嬉しい限りです(-.-)!また作品書いていく予定なので良かったら見てくださると嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします!(;_;) (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - サブレさん» 長い間待ってくださりありがとうございます(T_T)今まで気長に待っていただき本当に感謝してもしきれません!昔の作品にも目を通してくださるなんて本当に何と言っていいか(;_;)これからも全身全霊頑張っていきますね! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - しゅー!さん» ただいまです(;_;)本当に長い間待たせてしまって申し訳ないです(T_T)新作もすぐに更新していくつもりなので楽しみにお待ちください!1年間もの間楽しみに待っていただき本当にありがとうございました! (2020年10月19日 17時) (レス) id: 4df73778e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2019年8月14日 20時