新 人 執 事 ≪ Daiki.S ≫

執事25. ページ25

泣きそうになったのを慌てて堪えた。

そんな私を強引に後ろへと追いやった重岡は男たちの前に立っていた。









「お、俺の大事なA様にこういうことするのやめてくれませんか」


「あ？何やこいつ？」



重岡の指は確かに震えていた。

身体は震えているのに目はとても真剣で真っすぐで。









「俺はA様の執事です…！」


「執事ごときがなめたこと言ってるんちゃうぞ！！」




そう言った男たちは重岡を一発殴って。

その衝動で重岡はそのまま倒れ込んでしまった。









「一発殴っただけでへばるとか大したことないやつやなぁ」


「おい！そこの女！早くこっち来い！」



そう言った男は私の方に近づいてきて。

だけどなぜかゆっくりと立ち上がった重岡は私の目の前へとやってきた。









「こ、ここから先は行かせません！！」


「何やねんこいつ」



目の前にいる重岡は震えていて。

また目の前でもう一発殴られていた。









『重岡！もういいって！！』


「ほら！この女もそう言ってるんやし黙って見とけ！」



「嫌です！俺のA様には手出さんといてください！」


「しぶといやつやなぁ！！！」



最後にもう一発ぼこっと殴られた重岡。

何度殴られても男の足を必死で掴んでる重岡を私はただ見つめているだけだった。






分からなかった。

何でこんなに必死になって私のことを守ってくれるのか。



重岡といると変な気持ちになる。

さっきまで泣きそうだったのに重岡のせいで余計に泣きそうになってしまった。









『これ以上重岡を殴るんやったら警察呼ぶから！！』








そう言えば男たちは慌ててそそくさと行ってしまって。









取り残された私は慌ててスマホで神山を呼んだ。









.



すーっと走り続ける車の窓から外を見る。

もう辺りは真っ暗になっていた。









「A様、お怪我はございませんか？」


『重岡が助けてくれたから大丈夫』



"なら良かったです"そう言った神山はちらっと重岡の方を見て。

私も神山と同じように重岡の方を見た。






幸せそうにすやすやと眠る重岡。

そんな重岡はほっぺと口の横に痣ができていた。









「しげはA様のことを全力で守ったんですね」









そう言って優しく微笑んだ神山に何だか恥ずかしい気持ちになった。

執事26.→←執事24.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す