同 居 男 女 ≪ Nozomu.K ≫

同居36. ページ36

しーんっとしたリビングでソファに座って待つ。

がちゃっとドアの音がして玄関へ行けば小瀧が靴を脱いでいるところだった。






『なぁ、なんで言ったん？』


「はぁ？何が？」



私の質問にめんどくさそうにそう言った小瀧。

そんな小瀧は目の前に立つ私を無視してリビングへと歩いて行った。






『やから"一緒に同居してるから"みたいなこと言ってたやん』


「今日カレーやん、うまそ〜」



『なぁ！なんではぐらかすん！！』


「別にええやん、言っても」



小瀧の後を追いかけてそう問いつめれば

小瀧の口からは"別にええやん"という返事が返ってきて。



何の感情もない小瀧の返事に何だか少し泣きそうになった。







『やって…明日から学校のみんなにばれてさ』


『私やって小瀧やって色々言われるやん…今までずっと隠してたのになんで？』



机に置かれたままの少し冷めたカレー。

私の話を聞こうともせずに小瀧は目の前でカレーを頬張っていた。



私は小瀧の考えていることがまっったく分からなかった。







『これからどうするん？』


「別に今まで通りでええんちゃうん」



『何でそんなに普通でおれるん？みんなに知られてんで？』


「逆に聞くけど何でそんな必死なん、別にみんなにばれたぐらいええやん」



目の前にいる小瀧とちらりと目が合って。

でもそんな小瀧の目は今まで見たことがないぐらいとても冷たかった。






『小瀧はいいん？みんなに女子と一緒に住んでるって言われるんやで？』


「別にええやん、俺が告白されることも減るやろうし」



『私は嫌や、男と住んでるって思われるのも同居してることばれたのも』


「あっそ、別にお前がどうとかいちいち周りは考えてへんわ！」



立ち上がってそう言えば小瀧も私と同じように立ち上がって反論し始めて。

私たちのマンションは多分私たちのこの言い合いの声だけが響いていたと思う。






「俺はお前のこと女子やと思ったことないし！！」



そう叫んだ小瀧ははっと我に返ったようにこちらを見つめた。

"あ……"とどこか申し訳なさそうに私の顔を見つめる小瀧を無視して私は慌てて逃げた。






自分の部屋に入ってそのままベッドに潜り込む。

……私、小瀧に女の子としてすら見てもらえてなかった。







何でこんな目に合わないといけないのか。









じわじわ溢れ出てくる涙を堪えて私はそのまま眠りについた。

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