同 居 男 女 ≪ Nozomu.K ≫

同居25. ページ25

放課後。



藤井先輩に指定された場所に行くと藤井先輩はもうすでに来ていて。

嬉しそうにこちらに手を振る先輩に軽く手を振り返した。







「ナママケモノちゃん！」


『ナママケモノじゃないです、山村Aっていう名前がきちんとありますから』



嬉しそうにそう言ってくる藤井先輩に慌てて訂正する私。

そんな私は座り込んでいる先輩の隣に腰掛けた。






『あの…渡したいものって……』


「あ！そうそう！これやねんけど！」



そう言いかけると先輩は思い出したかのようにポケットから何かを取り出して。

そのまま笑顔で"じゃん！！"と言って私に差し出した。




"開けてもいいですか？"と聞けば"もちろん"と言ってくれた先輩。

ゆっくりと小さな袋を上げれば中からは可愛らしいイヤリングが出てきた。







「ナママケモノちゃんに似合うかなぁって思って」



イヤリングのセンスは抜群に良くて思わず"可愛い…"と声を漏らしてしまう。

"ありがとうございます"と言えば先輩は"絶対似合うわ〜"なんて言っていた。






『でもこういうことして彼女さんに怒られないんですか…？』



そんな私の言葉に先輩は戸惑ったように"なんで彼女おるって知ってるん！"と言って。

その瞬間、やっぱり昨日見たものは嘘じゃなかったんだってそう確信した。






「俺ずっと後輩が欲しかってん、優しく可愛がれるような」


「そのことあいつずっと知ってたから逆に喜んでくれてるで」



恥ずかしそうに頭を掻きながらそう言った先輩。

その後輩が私だなんて信じられないぐらい嬉しかった。





先輩が期待させるから、こうやってまた期待させてくるから。

そのせいでどんっと現実に突き落とされたときのショックは大きい。



でも勝手に勘違いをして舞い上がって調子に乗っていたのは全部私だった。







『私にはこういうことしてもいいですけど

彼女さん以外の女の子にあんまり期待させない方がいいですよ？』



「えへへ、何やねんいきなり」



"言われなくても彼女一筋やわ"そう言った先輩はゆっくりとその場に立ち上がった。

そんな先輩がおかしくてつい笑ってしまうと先輩もつられるように笑っていた。




私の先輩への想いは実ることはない。

でも今は心の底から先輩を好きになって良かったと思える。








ありがとう、私の初恋。









こうして私は先輩への恋心に終止符を打った。

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