家 庭 教 師 ≪ Daiki.S ≫

教師40. ページ40

あれから数日。



あんなことがあったにも関わらずあれからの私は案外普通で。

熱が完治した今日、久しぶりに学校に行けば桜が"よっ！"と挨拶してくれた。









「馬鹿は風邪引かへんって言葉は嘘やったんやな」


『今の私は馬鹿じゃないからな！！』



鼻で笑いながらそう言う桜を呆れた目で見つめる私。

確か濱田さんにもそんなこと言われた気がする。





そういえばあれから濱田さんに会ってないけど大丈夫かな。

私を助けてくれたのにあんなことになってしまうなんて…さすがに心配。









『てゆうか大学生の彼氏とはどうなったん？』


「あぁ…別れた」



『はぁ？あれだけメールで自慢してきたくせに？』


「Aに自慢した後に秒で別れた」



あのとき私が重岡さんの誤解を解いていたら少しでも変わっていたのだろうか。

私が理由を説明しなかったせいで重岡さんはずっと誤解したままで。



もしかしたらあんなに仲が良かった二人が絶縁してしまうかもしれない。

でも私には誤解を解く勇気なんて持ち合わせていなかった。









「やっぱり大学生はあかんわ！信用できひん！！」



そう言って目の前で香水を振りまいている桜。

桜のその言葉にいつもは否定するのになぜか今日はできなかった。



確かに大学生の考えていることはよく分からないし。

私たちと住む世界が違うっていうのも事実だ。








『桜の言う通り…信用できないかもなぁ』









でもそれでも重岡さんのことが頭から離れないのはきっと。









.



何気なく日も過ぎていって。

気づけば夏休みも終わるころに差し掛かっていた。



家庭教師の授業も格段に多くなっていって。

そんないつも通りの日常だけど一つだけ変わってしまったことがあった。









「花沢ちゃん、じゃあここのページ開いて」


『はい』



あれから私と重岡さんは必要最低限以外のことは話さなくなった。

話しても勉強のことを聞いたり話したりするだけ。




宿題の罰ゲーム制度もなくなった。

私が重岡さんを玄関まで送り迎えすることもなくなった。









私たちは普通の家庭教師の生徒と先生の関係になった。

前までみたいに仲良しの家庭教師とはかけ離れていた。









「よし、今日はこれで終わりな」


『……お疲れ様でした』









家庭教師と生徒の普通の会話、なのにとても胸が苦しかった。

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