家 庭 教 師 ≪ Daiki.S ≫

教師45. ページ45

目の前で優しく微笑む重岡さん。

そんな重岡さんに今すぐ抱きつきたかったがさすがにそれはやめておいた。









『重岡さん…私家庭教師やめることにしました』


『今度から塾に行くことになりました…！』



重岡さんの目が一瞬見開いた気がした。

また優しく微笑んだ重岡さんは"そっか"なんて。









『やからもう重岡さんとは会えません！』



嫌いだった世界が色づいていく。

大嫌いな太陽も蝉の声も全部好きになっていく。









『家庭教師がないと重岡さんに会う理由も重岡さんに近づく理由もありません！！』



私の言葉に重岡さんは少し悲しそうな表情を見せた。

そんな重岡さんはまた"そっか…"と口にしていた。









『でも…それでも！』


『四六時中どこにいても重岡さんに会いたいって思うんです』



重岡さん、最後に私の家庭教師として教えてください。

私の最後の質問に答えてください。









『どこにいても重岡さんのことが頭から離れないんです』


『これってどういう意味だと思いますか…？』



堪えていた涙が一気に溢れ出てくる。

ずっと秘めてきたこの思いをやっと今伝えることができたからだ。





しばらくしてから重岡さんは"俺もお前に聞きたいことがある"と言って。

さらに"俺の質問にも答えてくれへんか"と言っていた。









「何をしてても一番に頭に浮かんでくるのは花沢ちゃんの顔で」


「そんなんあかんって分かってるのにそれでも会いたいって思ってしまうねん」



"この気持ちは何なん？"そう言ってじっと私の目を見つめてきた重岡さん。

そんな重岡さんの目には私と同じように涙が溜まっていた。









『重岡さんっ…何で重岡さんが泣いてるんですかっ……』



堪らなくなって目の前の重岡さんに抱きついた。

私の大好きな大好きな重岡さんの香りがすぅっと鼻を掠めた。









「花沢ちゃんのことが好きで好きで仕方ないねん」


「俺と付き合ってくれませんか…？」



優しい重岡さんの声に涙が止まらなくなって。

私は必死に頷くのに精一杯だった。









「花沢ちゃん、顔見せて？」



そっと顔を上げれば目の前にいる重岡さんと至近距離で目が合って。

そのままぐいっと近づいてきた重岡さんはゆっくりと唇を重ねてきた。









目の前に広がる世界はキラキラと輝いていて。









ゆっくりと目を閉じれば蝉の声だけが聞こえていた。

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