教師26. ページ26
しばらく沈黙の時間が続く。
目の前でしゃがみ込んでいた濱田さんはそのままむくっと立ち上がった。
「……タグついてる」
『へっ?どこですか?』
「その服」
『え、うそ……』
新しく買ってしばらく着ていたワンピース。
そんなワンピースを見て濱田さんが一言そう言った。
慌てる私に濱田さんは一歩近づいて。
そのまま私の肩についていたタグを指でぶちっと引きちぎっていた。
"ありがとうございます…"と言えば濱田さんは相変わらず無表情で。
タグをつけていた自分がすごく恥ずかしく感じた。
「……あんた、この前の高校生やんな?」
『えっ……』
突然そう言われて思わず固まってしまう。
やはり私だとばれていたのだろうか。
「大学のやつらにナンパされてて…それでしげに助けてもらってた」
『あ、はい…よく覚えてますね』
私の方をじーっと見つめて淡々と話す濱田さん。
そんな濱田さんは"やっぱりな"と言っていた。
「それで…そんなワンピース着てるん?」
『え?どういうことですか?』
「しげのこと好きなんやろ?」
『なっ…なんでそれ……』
"どうせそのワンピースもしげのためやろ"と吐き捨てた濱田さん。
まだ会ったばかりなのに全て見透かされているようで少し怖くなった。
「でもしげはやめといた方がええで」
「あいつは真面目で鈍感やからな、ましてや高校生なんて絶対相手にせえへん」
そう言って冷たい目を私に向ける濱田さん。
重岡さんに振り向いてもらえてないことぐらい分かってる、そんなこと分かってる。
分かってるはずなのに濱田さんの言葉にすごく胸が苦しくなった。
「しげは昔からのダチやから高校生なんかと付き合ってほしくないねん」
そう言った濱田さんは"じゃあ帰るわ"と言って立ち上がって。
そのまま家のドアを開けてバイクに乗り込んでいた。
意地悪な人だと…心の底から思った。
人の想いを踏みにじる冷たい人。
だけどそれは重岡さんのためを思ってのことだった。
……高校生の私が重岡さんに近づけるはずがなかった。
「俺ならいつでも相手したるけど?」
『……いいです』
濱田さんが女の人にビンタされているところを偶然見てしまったことも知っているのか。
馬鹿にしたようにそう吐き捨てた濱田さんはそのまま勢いよく走っていった。
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りってぃ(プロフ) - まるみざわさん» コメントありがとうございます(:_;)完結おめでとうのお言葉ありがとうございます…!濱田くん私も書いていてすっごく楽しかったキャラでした、同じ方がいて嬉しい…!これからもよろしくお願いいたします(';')*** (2019年8月14日 20時) (レス) id: 7cdc997d36 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - な!さん» コメントありがとうございます(:_;)大好きだなんて…言葉にならないぐらい嬉しいです!また続編書こうかなと思ってたりもしてるんですけど…これで終わっちゃうのやっぱり寂しいですよね(';')ありがとうございます、頑張ります…! (2019年8月14日 20時) (レス) id: 7cdc997d36 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - マーメイドさん» コメントありがとうございます(:_;)家庭教師の重岡くん!私も書いていてすごく楽しかったのでこれがなくなると思うと寂しいです('_')ぜひ新作も見に来てあげてください…! (2019年8月14日 20時) (レス) id: 7cdc997d36 (このIDを非表示/違反報告)
りってぃ(プロフ) - やさきみさん» コメントありがとうございます(:_;)濱田くんのこと褒めていただいて嬉しいです…!個人的にも大好きなキャラでした!ぜひ新作も見に来てください、これからもよろしくお願いいたします…! (2019年8月14日 20時) (レス) id: 7cdc997d36 (このIDを非表示/違反報告)
まるみざわ - 家庭教師完結おめでとうございます…!!濱ちゃんのキャラがすごいドストライクで毎回ドキドキしてました(^o^) (2019年8月12日 23時) (レス) id: 85ea9caf95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りってぃ | 作成日時:2019年6月10日 19時