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二杯酢を飲み干し ページ20

「新堂さん、俺明日収録あったっけ」
「自分は伊沢の秘書ちゃうねんけど。10時やから遅れんなよ」
「あざす!」
「実質秘書みたいなもんじゃん。雑務全部引き受けてるし」
「福良が変われや」


絶対ヤダね。フロアの向こうから俺を見る新堂が首を傾げた。なんで新堂がそんなことを把握しているのかと言うと、昔からそうだったから、の一言で済まされる。
大量のクイズバカとたった1人の料理バカ。クイズに関わるコンテンツを制作する中で中庸に位置する新堂のポジションは重要だ。クイズを神聖視したり、クイズ以外となると能力をあまり発揮できない不器用な俺達の中で様々な事にうってつけなのが新堂だった。
有名な写真の知識はあれどもカメラなんぞ見分けのつかない俺達を見て、一人で秋葉原の電気屋を走り回ったのも新堂だし、スケジュール管理がボロボロの遅刻魔を取り締まるのも新堂だった。


「脚立持つ?」
「誰が掃き溜め部署やねん、しかも乾が何も分からん顔をしとるやないか」
「世代じゃないもんな。俺もリアタイはしてない」
「あの頃は明らかに男女差あったよね」
「そもそも台所に男の俺が入る時点で男女差別なんかできんねんドアホ」
「まあルターも女性のこと雑草とか言ってるからね」
「ルター基準?」


クイズに重きを置くこの組織。無論、それを共通項としているのだしそうなるのは当たり前だけど、クイズも謎解きもメジャーではなかったあの頃はそれが世間からは理解されない時代だった。新堂が自分の店や実家の店で知り合った世間のお偉いさんなどに必死に声をかけてくれなかったら、俺たちはちょっとだけトップが有名な学生団体で終わっていただろう。


「差別と区別を分からん奴が多い」
「良い事言った!新堂さんそゆとこ厳しいよな。俺も友達になりたない奴はおるけど、別にそいつらが嫌いなわけやないし…」
「まあウチはガキんときからメシ作ってたんで、食事の用意は女の仕事とか言われたら自分の仕事無くなりますわ。商売あがったりやし」
「ウチがあるじゃん」
「どつくぞ」
「料理人の家ってそんな感じなんだ。俺料理とか全然分からないからなあ」
「でしょうね」


名だたる料理人の集まる世界的コンテストで王者になった、幼い頃から知識と技術を叩き込まれた老舗の長子がここでは俺達を補佐するだけの人間になる。命と名前よりも先に包丁が与えられた、なんて逸話のある男をここに引き止めるのが果たして良い事なのか、俺は未だに答えを見つけられていない。

花形切りの愛を添えて→←関係性にとろみをつける



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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月5日 0時

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