レモングラスのガイヤーン ページ23
「料理人が嫌になった新堂君がプリティでキュアなヒーローに転職するって叫んびながら飛び降りたって聞いたんやけど。俺言ったじゃん、三食プラスお任せおつまみまでつくらせてんだからちゃんとその分の給料上乗せしとけ、って。お前らがタダでこき使いすぎてそっち方面を求めてんだろ」
「それガセですよ。つか須貝さんもおつまみは貪ってたでしょうが！貉！」
「マジ？てっきり会社が市民社会化しない限り戻ってこないのかと思っちまったじゃん。くそぉ、俺の脳内では劇場版でハピネスチャージと共演するとこまで進んだんだけど。ハートキャッチは今度やるからそろそろハピネス欲しいんだよな」
「そこまでいくと恐怖の感情しか湧いてこないんだよな…」
とまあCEOと茶番を繰り広げつつも脳内で考えるのは同郷の男の姿。クイズと狂気で成り立つ未熟で可愛いとこもある後輩達の中で異色なやつかと思いきや、界隈における有名度合いはあの伊沢拓司とタメを張るレベルというのだから、こりゃまた恐れ入る。
グループの中でも俺みたいな未経験者は浮いてるのかとよくよく観察してみると、腹を好かせた庶民の男子大学生向けに大衆料理を大皿に盛ってくれるのだからまあ人気はある訳で。意外と普通の人かと誤認してしまった頃にこの家出騒ぎ。
店を閉めて、誰に対しても料理は振る舞わず、コンビニの濃い味付けの飯。明らかに憔悴しきった様子に伊沢の声かけ。コップの縁から水が零れ落ちるどころか、粉々に割れて最高級グラスに変わる始末。
新型ウイルスに今まで無意識的に被っていたベールを捲られ、料理への剥き出しの狂気を持っていることを狂人達に分かりやすく見破られればあとはもう一本道。運動方程式に従って坂道を駆け下りるが如く、愛用の包丁とパスポートを持って影響の少ない国からスタートすれば、一周して帰ってくる頃には頼もしさもより一層ってね。
「new新堂さん、楽しみですね」
「強化フォーム気になるわ」
「だから、ヒーローにはならないんですって…」
「バッカヤロ、男は皆誰しも変身願望があんだよ」
「カフカですか？」
「それ毒虫な」
「まァ、このご時世自体が不条理文学か…」
我慢した後の飯は格別だしな、と自分に言い聞かせて溜飲を無理矢理下げなきゃやってられんと思わん？
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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (
レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狭 | 作成日時：2021年6月5日 0時
