湯剥き失敗したような顔すんな ページ13
｢新堂、もしかして店畳むの？｣
｢おん、よう気づいたな河村君｣
｢HPのお知らせ見たから｣
｢えっ！新堂さん店やめるんですか！｣
｢やめるで｣
河村から突如落とされた爆弾は即座に爆発した。爆心地はオフィスの真ん中に立つ新堂。犠牲者は俺と須貝さん、それからこうちゃん。本人は空が青く見える事を伝えるようにそれを肯定した。
｢うーん、このケロッとした顔｣
｢え？やめるの？え？なんで？業績不振？｣
｢あの味で業績不振なら他の店はゲテモノだぜ、おい｣
｢河村はもしかして毎日HPチェックしてるの？｣
｢してる。僕この店贔屓にしてんだよ。え、福良は贔屓にしてないの？｣
俺もしてるに決まってる。
｢感染者が増えてきたからな、閉めようと思って。元々いつかはやめようと考えてたからいい機会やし｣
｢今のウイルスってそんなにヤバいんですか？そこまで広がって無かった気がするんですけど…｣
こうちゃんの素朴な質問に俺も頷く。なぜなら、あの店がなくなったら俺の生命線も割と細くなるので。悲しいかな、俺の食事は1にコンビニ、2に新堂である。ちなんでおくと3.4が無くて5に新堂(賄い)。料理上手な友人って素晴らしい。
｢うん、こうちゃんの言う通りで人数は別に多くないんやけどな。ちょいと嫌な予感がする｣
｢嫌な予感？｣
｢閉めようとも思ってたし、まあ丁度ええかな思うて。会社の方に集中もしたかったし｣
｢なるほどね｣
確かに、会社の知名度上昇と伊沢の仕事の多忙化、更には企業との案件により、最近社内の仕事量は指数関数的に増加している。新堂は店もあるからこっち側には最低限の顔出ししかしていない。店をやめて会社に集中するとなれば格段に…とは言わずとも、それなりに楽にはなる筈だ。
でもそれは、新堂が幼い頃から培ってきた料理という技術を捨てるようなもの。有名な大会にも複数出て、名だたる店からのスカウトを蹴飛ばし、自らの店を開いたその夢はどうなるのだろうか。
｢心配しなさんな、福良｣
｢…｣
｢どぉせ、お前のことやし新堂本人の夢を蔑ろにしてまでウチの仕事に集中せんでもええとか思うとるやろ｣
｢…うん｣
｢俺はやりたいことやんのがモットーやねん。時代錯誤な年功序列が嫌やから他人の店には入らんし、河村君のクイズが面白かったからここ来てん、それは俺の意思やから安心しい｣
俺の心を見透かすような言葉を吐いた新堂に伊沢が笑う。
｢お疲れ様パーティしましょ！新堂さんの料理で！｣
｢俺かい！｣
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マサ(プロフ) - また、近頃あまり見なくなった、インターネットを通して読む文章だからこそのギミックも感激致しました。素敵な作品をありがとうございました。長文駄文失礼致しました。 (2021年11月14日 21時) (
レス) id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
マサ(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけて一気に読ませていただきました。全体的に文章自体が読みやすく、私は料理に詳しくないのですがそれでも分かりやすく書かれており、ストーリーも大変面白かったです。 (2021年11月14日 21時) (レス) @page29 id: 3122429ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狭 | 作成日時：2021年6月5日 0時
