30(you side) ページ30
個展へ彼を誘った時、堂々とつければいいはずのネックレスを私はブラウスの中へと隠すようにとつけた。
あわよくば何も気付かないでほしいと思ったからだ。
だったら付けなければいい、どちらかをきちんと選ばずに宙ぶらりんの状態でなんて酷いやつなんだ、って自分でも思っていた。
それでも、私はどちらも手放せないでいたのだ。
だから、個展で彼にネックレスの存在を聞かれて、その後帰国した日本で依存していた彼に別れを告げられて、罰が当たったなと思った。
｢ごめんね、もうAのことは好きだけど、そういう好きじゃないんだ。……というより、離れてみてAへの想いが好きだと思い込んでただけだって気付いたんだ。だから、ごめん、別れて欲しい｣
｢…他に好きな人でも出来た？｣
｢……うん、彼女のことが大切なんだ、本当にごめん｣
そう告げられた時、ぼんやりとやっぱりそうだったんだ、って思った。
だって、彼は私にたいしてとても優しくて、大切にはしてくれたけれど私に新しい世界を教えてくれるような人じゃない。
ずっと幼い頃から変わらぬ関係で、私の交友関係が浅くてもそれがAだよ、って優しく肯定して、それで私はずっとずっと浅くて狭い世界で変わらぬ日常に浸かっていたのだ。
両想いだとお互いがお互いに思い込んでいただけなのだろうか？
それとも、依存していた相手が急に離れてしまうことに焦りを憶えて恋だと錯覚した？
彼と別れて悲しいはずなのに、酷い私の頭に思い浮かぶのはジョンハンくんだけだった。
個展の後、どう思っただろう。
最低なやつだと思ったのかもしれない、私ならそう思う。
だけど、私はずっと自分が綺麗だと思ったものを絵に切り取ることにばかり傾倒して、人付き合いだなんて全くもってしてこなくて、私の世界は彼と私と家族と、そんな狭い狭い世界で生きてきたから、広い世界で生きてきたであろう彼の本心なんぞ全くもって検討がつかない。
笑ったりという感情を出さなくてもいいような世界に生きてきた私を彼はどう見ていたのだろう。
彼から見た私はどう映っていたのだろう。
そればかりが気になって、依存していた世界から急に放り出されて心細くなった私は気が付けば彼の気持ちなんて考えずにカトクを送っていたのだった。
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moco(プロフ) - はじめまして。引き込まれて夜中まで一気に読んでました^^;素敵なお話ありがとうございました♪続編もお待ちしています(*^^*) (2021年11月4日 19時) (
レス) @page50 id: b8fe820ef0 (このIDを非表示/違反報告)
しろもち(プロフ) - そのさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです😭貴重なお時間を割いて感想を書いてくださり本当にありがとうございます！ (2021年10月19日 13時) (レス) id: 726cd132f0 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - はじめまして。この作品を読んでとてもあたたかい気持ちになりました。私はジョンハンペンなのですが、切なく儚く恋しい青春の1ページを切り取ったようなこんな素敵な作品に出会えて、大好きなお話がまた一つ増えました。また他のお話も楽しみにしています☺︎ (2021年10月19日 10時) (レス) @page50 id: c07bdef56b (このIDを非表示/違反報告)
しろもち(プロフ) - つな缶の神様さん» 久々に小説を書き、めちゃくちゃドキドキしながら投稿したので、そう言っていただけて嬉しいです！こちらこそ貴重なお時間を使って読んでコメントまで残してくださってありがとうございます！ (2021年10月14日 18時) (レス) id: 726cd132f0 (このIDを非表示/違反報告)
つな缶の神様 - とても続きが気になります！素敵な小説を書いてくださって、ありがとうございます！ (2021年10月14日 18時) (レス) @page8 id: cd2586cfeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろもち | 作成日時：2021年10月14日 9時
