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何気なく足を向けた美術準備室。
特に理由もなく、ただ追い回される日常から逃げるための手段の1つでしかなかった。
ガラリと音をたて扉を開けると、埃っぽい匂いが立ち込めて鼻を刺激する。
思わず呼吸を止めて室内へと足を踏み入れると、古い床がギシギシと軋む。
JH｢うわ、めちゃくちゃ汚ないな…｣
壁に立て掛けられているよく分からない作品や画材たちを覆っている布は埃に塗れているのに、床だけはあまり埃っぽくないのが幸いだ。
あまり長時間居座るには良くない空気だが、長居する気はないのだしと奥へ進む。
すると、小部屋のようなところへと続く扉がほんの少しだけ開いていることに気付いた。
少しの好奇心から扉へと手をかけて中を覗く。
JH｢うわ……、｣
中には1枚の大きな向日葵の油絵があった。
その壮大さに小さく感嘆が漏れる。
｢誰…？｣
もっとよく見たくて中へと足を進めようとしたところで後ろから聞こえた鈴のような声。
振り返れば、1人の女子生徒が画材を手にして立っていた。
JH｢あ、勝手に入ってごめん。俺、ユン・ジョンハン。…これ、お前の作品？｣
｢ええ、そうですよ｣
それだけ答えると彼女は俺に興味を失くしたように静かに油絵の前の椅子へと腰掛ける。
俺の容姿に騒がれるのは面倒だからいいのだが、ここまで興味を持たれないとどこか肩透かしを食らったような気分だ。
特に何も言われないのをいいことに、彼女から少し離れたところへ座り込んで絵を描く様子を眺める。
｢椅子、そこの使ってください。床だけは掃除してるけど埃つきますよ｣
そう言って、彼女はこちらをチラリとも振り返らずに俺の少し先にある椅子を指さして再び絵を描きだした。
俺は言われた通り椅子を引っ張って、同じところから眺める。
日の光に照らされた彼女の髪は染めたことが1度もないのか、傷みのない黒髪で、艶々と反射していた。
彼女の白く細い指先が描く向日葵は、まるでそうなることが予め決まっているかのように迷いなく筆先を進める。
俺と彼女だけを切り取ったかのような空間は心地よく、会話がないことすらも気にならない。
気が付けば予鈴のチャイムが鳴るまで俺はそこに居座っていた。
｢鍵閉めるから先に出てください｣
彼女のその一言に頷き、教室へと足を踏み入れた時、そういえば彼女の名前を知らないことに気が付いた。
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moco(プロフ) - はじめまして。引き込まれて夜中まで一気に読んでました^^;素敵なお話ありがとうございました♪続編もお待ちしています(*^^*) (2021年11月4日 19時) (
レス) @page50 id: b8fe820ef0 (このIDを非表示/違反報告)
しろもち(プロフ) - そのさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです😭貴重なお時間を割いて感想を書いてくださり本当にありがとうございます！ (2021年10月19日 13時) (レス) id: 726cd132f0 (このIDを非表示/違反報告)
その(プロフ) - はじめまして。この作品を読んでとてもあたたかい気持ちになりました。私はジョンハンペンなのですが、切なく儚く恋しい青春の1ページを切り取ったようなこんな素敵な作品に出会えて、大好きなお話がまた一つ増えました。また他のお話も楽しみにしています☺︎ (2021年10月19日 10時) (レス) @page50 id: c07bdef56b (このIDを非表示/違反報告)
しろもち(プロフ) - つな缶の神様さん» 久々に小説を書き、めちゃくちゃドキドキしながら投稿したので、そう言っていただけて嬉しいです！こちらこそ貴重なお時間を使って読んでコメントまで残してくださってありがとうございます！ (2021年10月14日 18時) (レス) id: 726cd132f0 (このIDを非表示/違反報告)
つな缶の神様 - とても続きが気になります！素敵な小説を書いてくださって、ありがとうございます！ (2021年10月14日 18時) (レス) @page8 id: cd2586cfeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろもち | 作成日時：2021年10月14日 9時
