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中也君? ページ8

『じゃあよろしくね、中也君』


彼は中也君と云われたのが余程嬉しかったのかはわからないが、目を丸くして、

中「お、おう。よろしくな」

と、まるで独り言のように云った。

中也はAの顔を真正面からじぃっと見つめた。


その瞬間、彼は体の芯から凍りついたような
感覚に陥ったのだった。

それは、あの鴎外を見た時よりも、もっともっと強力な、そしておぞましい……

彼女から目を晒さなければいけないと分かっていて、それでいて金縛りのように、見開かれた目が閉じない。


『……どうしたの』

この一言で、彼は現実世界に引き戻された。

彼は初めて、重力とはなんたるかを理解したような気がしたのだった。

中「いや……」

中也は、今自分が何に恐れていたのかがわからなくなった。

黒髪に浮き出るような、白い妖狐のお面。

姉さんはなんと呼んでいたっけ……

たしか、お稲荷様、とかなんとか、、、

厳密にいうと、お稲荷様=キツネではないのだが、そっちの方が呼び易いからとか云っていたような気がする。


お稲荷様は神様である。

彼は、とたんにその意味を理解した。

云われる筈だ。

『……あなたは強いの?だから幹部なの』


中「え?」

『強いよ、私』


中「……そうなのか」


『うん。あなたよりもねぇ。悔しいならきなよ、私、今、退屈なんだ、こんなとこに入れられて、右も左もわからないようなとこに閉じ込められて、ほら!知ってるの、あなたは、喧嘩がお好きなんでしょ!』


Aの口が、まるで裂けるかのようにまで黒い笑みを形作った。


彼は、この“喧嘩”には乗り気になれなかった。

だが、

中「上等だ!やってやる!」

いつのまにか叫んでいたのだった。

そして彼はその一秒後、後悔していた。

中也は、Aの異能を知らなかったのだ。

監獄→←剣士と診療所


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作者名:丸ノ内マルフォイ | 作者ホームページ:http://subetenohazimari  
作成日時:2019年10月28日 22時

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