えま ページ3
その日の放課後。一人廊下を歩く想い人を、私は呼び止める。
「……相澤せんせー」
「！！ お前か。今度はどうした」
また告白か、とならなかったのは当然のことだろう。私は今まで朝に一回しか告白してこなかった。好意を自覚してから半年ほどたった二年生のある日に、私は初めての告白をした。生まれて初めての、それから何度も繰り返すことになる告白を。
「先生。相澤先生」
「何だ」
少しうんざりしたような顔を向けられても、私は笑みを顔に張り付ける。だって、私にできる顔はこれしかない。
先生に掛ける迷惑を少しでも減らすためには、笑顔を貫くしかない。
ない、けれど。
「好き、で、す、」
断られて胸が痛いのも、迷惑を掛けているのが心苦しいのも。全部笑顔で隠せたのに。
最近どうにもそれが難しい。
突然泣き出した私に先生はさすがに動揺したらしい。何かしら声を掛けようとしたのだろう、口を開きかけた先生を制するために私は首を振った。
「ごめんなさい、大丈夫です。今日だけです。こんなみっともない顔見せるのは今日だけ。あとはずっと笑ってます。明日から、またずっと笑顔でいます」
非合理的だと貴方は言うけれど。
全ての感情を押し隠して“大丈夫”を演出するのに、これほど合理的な表情は無いと私は思う。
「だから、明日も私は告白しに来ます。明後日も、その次の日も。受け入れてもらえると思ってるわけじゃないんです。伝えずには、いられないから」
目元を擦る。明日になって腫れないように、今日思いっきり冷やすしかない。明日には、私は“何も気にしていない、へらへらした”私にならないといけないのだから。
「大体先生も悪いんです。先生が優しいから。迷惑だって思ってるはずなのにそんなこと言わないから。だから私先生の優しさに甘えます」
明日も明後日もその次の日も。
私は貴方に告白する。
「みっともなくてごめんなさい。貴方が好きでごめんなさい。それでも諦められないんです」
必死に笑ってみせる。
私は大丈夫だと、先生に伝えるために。すると先生がため息をついて何かを呟いた。
「？ 何か、言いましたか？」
「……いや。気を付けて帰れ」
ほら、やっぱり先生は優しい。そして酷い人。
これだから私は貴方を諦められないのだ。
「はい。また明日」
この時先生が呟いていた言葉を私が知るのは、卒業後のことになる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヒロアカ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉(プロフ) - はじめのやつ好き…！夜噛ちゃんと心操くんも好きぃい！！すっごいおもしろかったです！ (2018年10月6日 14時) (
レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
@ - 外し忘れなんて軽い感覚は捨てろ。違反行為だという自覚を持て。貴方みたいに軽い気持ちで外し忘れる作者ばかりだからオリジナルの新着に二次創作が溢れかえってんだよ (2018年6月24日 9時) (レス) id: 6ec6be6010 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
