大ちゃんは、俺のだから。【ar×ym】 (ページ28)

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ymside

正直、今ここで俺が中に入るのは無理だと思う

それに、俺が入ったところで、なにもできない

…なぐさめることさえも。

俺はただの同じグループのメンバーだから。

すると中から、大ちゃんのすすり泣く声が

聞こえてきた。

…え？

びっくりして顔をあげてしまう。

ウソでしょ…？

泣いてるの、大ちゃん。

だっていっつも、いのちゃんと話してるときは

笑ってたじゃん。

いのちゃんの話すするだけで、

頬を緩ませて、幸せそうだったじゃん。

なのに、なんで泣いてるの…。

『…っ』

抱きしめたい。

このまま楽屋に入って、

「いのちゃんのことなんて忘れろ」って、

それだけ言って、涙を拭いてあげたい。

だけど、今の俺じゃダメだ。

今行っても、強がりな大ちゃんの涙を

止めちゃう。

そんなことはさせない。

泣きたいときは泣けばいい。

涙を止めたら、その分つらさ大ちゃんの中に

たまるだけでしょ？

もどかしい気持ちの中、

俺は大ちゃんの泣き声を聞きながら、決心した

ドアは開けずに、そっと外側から触れる。

この壁みたいに、大ちゃんとの間に

隔たりを作ってしまったのは、俺の方だ。

俺は自分が傷付くのが怖くて、

好きな人から逃げていた。

…だけど、もうやめる。

絶対に俺が、大ちゃんを守ってやるって、

そう決めた。

今度こそ、大ちゃんのSOSを見逃さない。

〝ヒーローみたいで、かっこよくて…〟

いつかの大ちゃんの言葉。

ヒーローとか、意味分かんないと思ってた。

だけど…大ちゃんが望むなら。

大ちゃんが必要だって思うなら。

俺がなってあげる。そのヒーローってやつ。

もう、大ちゃんひとりで、

こっそり泣かなくていいように。

楽しいときは心から笑えるような、

そんな場所を、俺が作ってあげる。

俺が、大ちゃんのヒーローに、なってあげる。

大ちゃんの泣いてるとこ見たときに、

俺はそう決めたんだ。

そんなに頑張らなくていい。

ムリしないで。

俺がいるから。

大ちゃんのこと、ずっと想ってた俺がいるから

だから、また笑って。

『あきらめられるかよ…』

ポツリ、消え入るような声で呟いたその言葉は

きっと楽屋の中にいる大ちゃんには届かない。