大ちゃんは、俺のだから。【ar×ym】 (ページ18)

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1年前のあの出来事…。
その人はひとつ上の同じグループの伊野尾慧。
あるとき廊下ですれ違ったガラの悪いスタッフに、運悪くぶつかってしまった俺。

スタッフ『何ぶつかってんだよ！』

『わ、すみません！』

スタッフ『謝って済むかよ。テメェ、有岡大貴だろ。調子のってんじゃねぇよ！』

ぶつかってしまった相手は機嫌を損ねたらしく、怒りをあらわにして叫んだ。
怖くてたまらなかった俺は、体をふるわせて怯えていた。

『何してんの？』

そんなとき、冷静な声が聞こえてきて。

『俺の大ちゃんに、何してんの？やめてくんない？』

顔をあげると、いのちゃんが、俺を背にしてかばってくれていた。
俺はいのちゃんに恋をしてしまった。
男だよ？と、笑う人もいるかもしれない。
だけどあの瞬間から、いのちゃんは俺のヒーローになった。

それから、いのちゃんを見かけたら話しかけていた。
本当に大好きで、片想いしているときは、毎日が楽しかった。
ずっと追いかけて、追いかけて。
そしたらある日、いのちゃんが言ったんだ。
『僕と付き合う？』って。
うれしかった。
幸せだった。
ただ一緒にいて、デートして、電話して。
毎日が楽しかった。
このことは、知念と山田だけ知っている。
だけど、終わるときは一瞬で。
あれはそうだな…ちょうど夏前だから半年くらい前。
いのちゃんに、裏切られていたことを知った。
仕事終わり、遅くなると言ったいのちゃんを内緒で待ってて、一緒に帰りたくて楽屋まで迎えにいったのに。
そこで、いのちゃんが高木と抱き合っているのを見てしまった。
そして、夏に入る直前、勇気を出してそのことについて聞くと…いのちゃんは何も教えてくれないまま、めんどくさそうに俺をふった。
あんなに、優しくて、温かい人だったのに。
別れるときの目は、とても冷たくて。
こんなにもあっけないものなんだと、そのとき思ったんだ。

あれきり俺は、恋愛はもういいやって思った。
それ以来、日常で笑えなくなっていった。
だけど、仕事では、ちょっとムリをして笑ってた。
…そのことに、少し疲れてた。
俺さ、山田が突然話しかけてくれなくなったの、気づいてたよ。
いのちゃんと付き合う前までは、イヤってくらいイジワルしてきたのに、急にしゃべらなくなったよね。
山田はもう、俺とは話してくれないのかなっと思ってた。
だけど、なんだ…。
山田、俺のこと、ちょっとは気にしてくれてくれてたんだな。
「ありがと、山田」