大ちゃんは、俺のだから。【ar×ym】 (ページ14)

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～arside～
12月上旬。
そろそろ寒くなってきた、今日この頃。
よくわからないなりゆきで、助けられた借りを返すために、山田と恋人(仮)の関係になった俺。
あれからもう１週間がたち、今はなんと、休憩時間に一緒にゲームをしている。
この関係にも少しずつ慣れ(慣れてないけど山田いわく、習うより慣れろだそうで) 、ようやくウワサも落ち着きはじめたある日。

ym 「そういや、大ちゃん」

俺の彼氏(仮)となった山田が、唐突に言った。

ym 「駅前にあるドーナツ屋、行ったことある？」

「なにそれ」

ym 「知らないの！？ほら、新しくできたって有名なやつ！」

「あー、なんか聞いたことあるかも。行ったことはないけど」

ym 「へぇ、そんなんだ。俺は何回か行ったことあるけどな～」

両手を後頭部に当て、なぜか山田は得意げだ。

ym 「新しいだけあって、それなりにキレイだったよ？なんか、今なら限定メニューもあるらしいし」

「知らなかった。すごいんだね」
俺の反応は、山田にとってあまり好ましいものではなかったようだ。

ym 「って、なんで、もっとうらやましがらないの！他にもなんか言うことあるでしょ？すごいんだね、だけじゃなくて…！」

「…？」
いったい、なにがあるというんだ？
わからん。
わからなさすぎて、首を傾げて考えてみた。
すると山田は、盛大にため息をつく。

ym 「大ちゃんって、本当になんにもわかってないんだね」

山田はいたってマジメな顔で、俺にダメ出ししてきた。
なんでこんなことになっているのか、やっぱり意味が分かんない。

ym 「こういうときは、〝いいなー！俺も連れていってほしい！〟って彼氏に言うんだよ」

「…でも、仮の彼氏だろ」

ym 「バーカ。できるかぎりカップルっぽく見せねぇと、周りにバレるだろ。ウソでも言うんだよ、そこは！」

「…な、なるほど」
一度決めたことは手を抜かない。
なんてぬかりがないんだ、山田は。
俺は少々感動しながら納得した。
「いいなー！俺も連れていってほしい！…こんな感じ？」
さっそく教わったとおりに言ってみると、山田はわざとらしく腕を組んで、俺を見おろした。

ym 「ふ、ふーん…そんなに連れていってほしいのか」

ん？

ym 「まぁ、大ちゃんがどうしてもって言うなら、連れていってあげなくもないよ」

こういう場合、彼女は素直にお礼を言えばいいんだよな？
これで少しはカップルっぽく見えるってことだろ？