QK看病日記

「ごめんなさい」禁止令-ymmt-＊ ページ8

福良side
「わぁ、びっくりした」

誰もいないと思っていたが、彼のほうが先に来ていたらしい。デスクで予想していなかった背中を見つけて少し驚いた。

「山本ー？」

パソコンの前に突っ伏して寝ている。そういえば昨日は泊まるって連絡が来てたから、もしかして昨日の夜からずっとこの状態なんだろうか。

「山本さーん？」

「んぅ……ふくらさん……？」

「うん、おはよう。寝るならあっちで寝たほうが……」

ゆっくりとデスクから立ち上がる山本。その瞬間、体がぐらりと揺れて、とっさに受け止める。

「山本？ちょっと、大丈夫？」

足に力が入っていないらしく、ずるずると膝から崩れ落ちるように床にしゃがみ込んだ。

「ごめん、なさ、」

長めの前髪の下から覗く彼の顔は真っ赤だった。どうして気づかなかったんだろう。呼吸も荒く、かなり辛そうだ。

「ちょっと持ち上げるよ」

とりあえずソファーに運ぼうと思って、一言断りを入れてから抱きかかえる。山本の体格ならこれくらいは余裕だ。

「熱測るよ」

ぐったりとしている山本に体温計を挟ませる。わざわざ測らなくても、だいぶ高熱なのはもうわかっているけれど。案の定、体温計が示した数字は、ゆうに38℃を超えていた。

「いつからなの？」

「……きのう、です」

聞けば、昨日は朝から微熱があったらしい。俺らが帰ったあと急に熱が上がって、帰るのどころか動くのも辛かったため、さっきのような状態で寝てしまったそうだ。

「連絡くれればよかったのに」

「……ごめんなさい、」

謝られると同時に、もともと潤んでいた彼の目から、涙の粒が流れ落ちた。

「なんで泣くの〜、」

「ごめ、なさぃ、」

拭っても拭っても涙は止まらなくて、袖がびしょびしょに濡れている。高熱で情緒不安定になっているんだろう。ティッシュを何枚か取り、目の辺りをそっと拭いてあげた。

「もう大丈夫？」

「……はぃ、」

しばらく頭を撫でていると、ようやく落ち着いてきた。

「……ごめんなさい、」

山本の口からまたそんな言葉が漏れる。今日の彼は謝ってばっかりだ。

「謝るようなことしてないでしょう」

「でも、」

「山本は悪くないし、俺も謝ってほしいとか思ってないから、それでいいの」

そう言うとまた、ごめんなさいと言いかける山本。本当に気遣いができる子なんだなぁと思う。

「しばらく寝てな。起きたら病院行こうね」

熱で寝付けないのか、しばらく寝返りを打っていたけど、いつのまにか寝息を立てていた。

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