秋 ページ16
それからしばらく経ち、地方大会、全国大会で個人優勝という成績を収めたAは、2学期が始まって早々に職員室を訪れた。今日は自主的な確認ではなく、潮崎から呼び出しを受けている。
「潮崎先生、お話って……?」
「ああ、弓道部のことなんだけどね」
一呼吸置いた潮崎。その表情は何とも言えないもので、Aは結果がどちらか判断しかねていた。しかし、1年生にして全国優勝である。十中八九大丈夫だろうと予想していたが、弓道に興味のない潮崎にはそれほどの感動はなさそうだった。
「とりあえず、廃部は保留になったよ。すごいじゃないか、この短期間で、大会3連覇だったかな?」
「いえ、たまたまです。ありがとうございます」
聞きたいことは聞けた。早く2人に伝えなければと足早に職員室を出たAは、教室へ急いだ。
「あ、Aおはよー」
「はよ。Aが遅いの、珍しいな」
「おはよう。潮崎先生に呼び出されて職員室寄ってきたの。とりあえず、廃部は保留になったって」
「ほんと? よかったぁ」
「Aのおかげだな」
結果だけ見れば荒垣の言う通りだが、A1人でできたかと言えばそれは違う。だがそれを朝の教室という公衆の面前で、声高に伝えられるほどの素直さをAは備えていなかった。お礼は部活の時に言おうと決めて、ここでは照れ隠しに留める。
「別に、大したことしてない」
「……全国優勝よりすごいことがあるのか?」
「…………」
「ないんだ」
「しらない」
「照れA、かわい〜」
「もー……」
「牛?」
「ちーがーうー」
Aはからかってくる2人を上手くあしらえず、机に顔を伏せた。
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作者名:三宮 | 作者ホームページ:https://alicex.jp/riiiiidoooosog7/
作成日時:2023年6月26日 0時