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琴葉には朝一で来ていたが、いつの間にやら昼過ぎになっていた。
「お腹空いたな〜」
「どっか寄っていくか。って言っても、このへんの店はわかんないけど」
「そういえば、A、中学はこのへんだったの?」
「うん。桐先ってとこ」
「それって、弓道の強豪校だよな。この前ちょっと調べたときに見た名前だ。確か高等部もあったはずだけど」
「うん。全国常連校だね」
「なんで辻峰に来たの?」
「父親の転勤についてきただけ」
「そうだったのか。Aのお父さんに感謝だな」
「そうだね〜」
荒垣の言葉を聞いたAは思わず足を止めた。それから何か言おうと口を開きかけるが、しかし言葉が出てくることはなかった。
「A?」
突然立ち止まったAに、2人も歩みを止めて戻ってくる。
「あ……ごめん、なんでもない」
Aは訳あって、父親のことを心底嫌い、同時に恐れていた。しかしこの2人にそんなことは一切伝えていないため、Aと父親の関係など知るはずもなく、荒垣としては何気なく言った言葉だった。
「2人とも、何食べたい? 駅の方に行けばお店あるから、行こ」
Aは2人の興味が逸れそうな話題を出した。Aもお腹は空いていたし、顔見知りと遭遇するのも面倒だから、早く辻峰に戻りたいという気持ちもある。
「焼肉食べたいな〜」
「昼からか? ファミレスとかでいいんだけど」
「ファミレスもいいなぁ」
「樋口は食べられればなんでもいいわけね」
なんだかんだで、ファミレスに寄って帰ることになった。
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作者名:三宮 | 作者ホームページ:https://alicex.jp/riiiiidoooosog7/
作成日時:2023年6月26日 0時