アナタノアンチ。 (ページ10)

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No.04　“愛は無意義か、有意義か” ページ10

《フィルルくん！出撃命令がきたよ！》
通知読み上げソフトの可愛らしい声が、フィルルの端末から聞こえてくる。フィルルは自分のポケットをまさぐった。
「っと…どの世界に行けばいいんだ〜？」

「『人間が物に寄生される世界』…ね。」
フィルルは舐めていた飴をガリッと噛み砕き、棒を近くのゴミ箱に捨てた。深くため息をつき、ヒールで地面を二度ほど蹴り鳴らす。
フィルルの下から影が広がり、そこに溶け落ちる様にして、観測者側の世界(オブザーバールーム)から消えていった。

「ちょっほ本当にお願いします許してくださいぃい！！！」
幸亞は逃げ惑っていた。後ろからはレイトが迫ってきていて、そろそろ体力の限界も来る。
「おおおおお金なら払いますからっこれっ財布！！！」
幸亞はポケットから財布を取り出し、後ろに投げる。小銭まみれの幸亞の財布は、じゃらじゃらと音を立ててレイトの肩に当たる。レイトは目にも止めずに、目の前の相手である幸亞だけを追う。
「大丈夫大丈夫大丈夫っ……きっと王子様が僕のこと助けてくれる……！！」
幸亞はぼそぼそと希望を呟いた。
「…ちょっと殺したいだけなんだけど。止まれよ」
レイトは幸亞にギリギリ聞こえるくらいの、小さめの声で言った。
フィルルが世界観移動を終える。と、ちょうど幸亞とレイトが目の前を通過していった。風でフィルルの髪が大きく揺れる。
「ちょ……止まりそうにないな、ありゃ。」
フィルルは手を伸ばすも、すぐに下ろす。
そして徐に、綺麗に装飾された棒を取り出した。
「試作品渡されたって、ど〜なるかわかんないからね。」
棒の中心を強く握る。と、棒が一気に伸びて箒の様になる。これは、キリュウギから貰った新開発武器の試作品だった。フィルル用に、ちゃんとパステルカラーでファンシーな装飾を施してある。
「キリューセンパイ、センスいいじゃん！」
さっと箒に跨り、
「並行浮遊走行機(マーチフロート)試作号、起動！」
と叫んだ。視線を前に向ける間もなく、箒は素早く飛んだ。
フィルルは、自分が乗ったことのある一番早い乗り物を想像した。懐かしんでいると、既に幸亞とレイトの上を飛んでいることに気がついた。
幸亞はもう体力が限界で、今にも足が止まりそうだ。
「掴まって！！」
フィルルは下降し、幸亞のすぐそばまで迫る。左手を伸ばし、差し出した。
幸亞は怯えながらもすぐさま手を伸ばし、フィルルの手をグッと掴んだ。