アナタノアンチ。 (ページ5)

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No.02　中編ページ5

「あ！人だ…ねぇ、この辺り全然誰もいないね。ちょっと寂しい感じ！」
響は斧を持つ手を少しだけ緩めた。
しかし、それをすぐに後悔することになった。
氷子は真っ直ぐに響を狙い、弾丸を放つ。斧の刄の側面で全てを受け、敵意がないわけではないことを再確認する。
「あ…p、prayer…！人が話そうとしてる時に…！！」
氷子は混乱の表情を浮かべる。氷子が元々いたのは、ゲームの中の世界。全てのキャラはprayerの意思によって動き、戦い、殺し、殺される、ターン制バトルのロールプレイングゲームである。
禍異物(マガイモノ)は、コピーされた時に、オリジナルの殆どの情報を受け継ぐ。しかし、prayerの意思で制御をするような高度なプログラミングは、果たして再現できるのだろうか？

答えは否だ。今彼女は、禍異物(マガイモノ)特有の衝動のみで動いている。人間の認識効果とは凄いもので、思い込むだけで自分の意思ではないように感じてしまう(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)のだ。

「戦う意志のない禍異物(マガイモノ)はいても、戦う衝動のない禍異物(マガイモノ)なんていない」

響は自分に言い聞かせた。どうせ、偽物だ。殺してしまっても良い。人じゃないのだから。
反対勢力(アナタノアンチ。)の戦闘員面々は、性格が悪いと詰られることが多いが、性格のいい人間は、この仕事には耐えられないだろう。
卑屈で、人に恨みを持ち、殺意を抱き、それを実行できる人間だけが、戦闘員になることができるのだから。

響は思考を巡らせる。“魔法なんて使われたら”…と。
響が全力を込めて斧を振るう。氷子の頭上から、体を真二つに割くように。
最悪の予想は見事に的中してしまったようだ。
斧は甲高い金属音のようなものをあげ、氷子の少し上で止まった。
「私は『スキル・祝福の子』を持ってるから、攻撃は当たらないよ。ごめん」
氷子は光るナイフのようなものを、がら空いた響の胸に差し込んだ。響は斧を握る力も出なくなり、浮遊することもできなくなる。全てを離した地面に落ちた。斧は氷子がひょいと身を避けると、響の近くに落ちた。

「ああ！！君こそが神なんだね？！その神々しい姿と力！！実に素晴らしいよ！！！」
鉄郎が叫んだ。神を信仰するものと、歪んだ神のような力を手に入れたものが対峙してしまった。響の考え得る中で、一番最悪なケースだ。