アナタノアンチ。 (ページ12)

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No.04　後編ページ12

不運体質の幸亞は、この手の乗り物から何度落ちたことか。もううんざりだった。

幸亞はフィルルから一度視線を外す。と、その視線の先には一般人と思われる他の人が、フィルルの死角の方面からやってくる。レイトにはギリギリ視認ができそうだが、今は戦闘に必死だ。
「あれ…やばくないですか？」
殺せるなら誰でも良さそうな相手だ。まずいと思い、幸亞は包帯を急いで箒から外し、飛び降りた。
と同時に、レイトの目に一般人が止まった。レイトはすかさずそちらへ走る。レイトがナイフを振りかぶり、思い切り振るった。ナイフは、

幸亞の包帯を引き裂きつつ、腕まで切った。
「い”……ったい…なぁ…！！」
包帯にも少なからず痛覚が宿る。今日学んだことはそれだけだ。
「はっ…は早く逃げてくっくれません？！めめめ迷惑ですっ！！」
後ろに向かいそう叫ぶと、急いで切られたところに包帯を巻きつけた。人を逃すことに成功したのだ。
「僕に構ってて大丈夫ですか？」
レイトはハッとして後ろを見ようとする。だが、フィルルは既に武器を振りかぶっており、それをレイトの頭に横から思い切り当てた。レイトは吹き飛び、頭から気を失ったか死んだか分からないほどの血を流した。
「他の子を守ってくれてありがと〜！勇気あるねぇ！」
フィルルは嬉々とした表情で幸亞に声をかけた。幸亞はへたっと座り込み、
「王子様………！！」
と言った。もう痛いことなど覚えてないらしい。
「じゃ、ちゃちゃっと忘れさせちゃいますか。フィーが可愛いのは仕方ないけど、お仕事だし。」
フィルルは武器を本当のロリポップくらいの大きさに縮め、上に向けて構えた。
「いっ一切口外しませんから！！！王子様のことだけは忘れさせないでください！！！」
幸亞は胸の前で腕を組み、懇願の姿勢をとる。フィルルは十五秒ほど悩んだのち、
「指切りしようか！フィーとの約束ね？」
と言い、幸亞の手を取った。
「指切りげんまんっ嘘ついたら、はり千本、のーますっ！」
「ゆーびきーった！」
幸亞は満面の笑みだった。
「君は何にも見てないからね！フィーにたまたま出会っちゃっただけ！」
フィルルの言葉に元気よく答え、幸亞は笑顔で去っていった。
「愛は確かにあるよ。…僕にはあった」
フィルルは悲しく呟いた。愛することの喜びと悲しみ、どちらも理解できるからだ。

▼フィルル・キャンディー
▼死凶幸亞
▼沢渡レイト