No.04 中編 ページ11
「掴まって!!」
フィルルは下降し、幸亞のすぐそばまで迫る。左手を伸ばし、差し出した。
幸亞は怯えながらもすぐさま手を伸ばし、フィルルの手をグッと掴んだ。そして、投げる様に幸亞の体を持ち上げ、箒の後ろに乗せた。
「
フィルルは箒に幸亞を任せ、飛び降りた。
「暫くそこにいてね〜!フィーがこの子やっつけちゃうから!」
レイトは臨戦態勢をとっており、いつでも戦えそうだ。獲物を横取りされたことについて怒っているのかは分からないが、フィルルに殺意の目を向けているのは確実だ。
「……もうお前でいい。殺す」
会話をする気は一切ない様だ。フィルルはロリポップの様な打撃武器を取り出した。互いに攻撃を仕掛けながら、一方的にフィルルは話しかけ続ける。
「辞めなよこんなこと!フィーに殺されたほうが楽だよ?」
返答はない。的確に隙をつく様なレイトの攻撃に、怯むことなくフィルルは進む。
「君のその感情は偽物なの!愛の天使のフィーが楽にしてあげるってばぁ!」
下から大きく武器を振るう。戦い方に関しては、響の斧と似ているところがあるだろう。レイトは流石に飛び退き、持っていたナイフをカウンタースタイルに持ち直す。
フィルルも構えたままその場から動かない。
「神も天使も愛も有るわけない。もう思い知った。」
レイトの言葉にフィルルは何も言えず、再び進んだ。
「はわ、はわわわわわわ……!!!」
二人の戦いの蚊帳の外にいたのは、最初被害者だったはずの幸亞だ。しかし今、彼は二人の戦いに目を輝かせている。
「あなたが僕の王子様なんですか…?」
箒から落ちない様に体は動かしていないが、表情だけで喜びを表している。
「いやっ…お姫様って言うべきですかね…?はあぁっ嬉しいです…!!!本当に来てくれたんですね!!!」
吐息混じりの歓喜の声は、二人には届いていなかった。上から距離をとって戦闘を見つめる彼の目は、さっきまで死の恐怖を感じていたとは考えられないほど輝きと恍惚に満ちている。
「かっ神様仏様閻魔様、あああああありがとうございますうぅっ!!!」
胸の前で手を組むと、一瞬落ちそうになる。慌てつつすぐに箒を掴み直し、ずっとフィルルを見つめていた。
「あ。そうだ」
幸亞は包帯を伸ばし、箒にぐるぐると幾重にも巻きつけて固定した。側から見たら異様な光景ではあったが、確実な護身方法だ。不運体質の幸亞は、この手の乗り物から何度落ちたことか。もううんざりだった。
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低浮上の私。(プロフ) - ももさん» ありがとうございます、頑張ります (2月28日 18時) (レス) id: 42776d6356 (このIDを非表示/違反報告)
低浮上の私。(プロフ) - 裏華(うらか)さん» ありがとうございます、少々お待ちくださいね (2月28日 18時) (レス) id: 42776d6356 (このIDを非表示/違反報告)
もも - めっちゃ楽しみ♪♪♪ (2月27日 20時) (レス) id: 12bc70a190 (このIDを非表示/違反報告)
裏華(うらか) - 続きが気になります・・・‼︎ (2月27日 17時) (レス) id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
低浮上の私。(プロフ) - りこーだぁ☆さん» ありがとうございます、頑張らせていただきます (2月27日 17時) (レス) id: 42776d6356 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:低浮上の私 | 作成日時:2024年1月22日 20時