アナタノアンチ。 (ページ2)

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No.01　中編ページ2

真孤が
「もう、飽きたから、殺すね」
と言い手持ちのナイフを投げた。
ナイフは音を切り裂きながらコオリを追う。
コオリは一瞬だけ後ろを振り返り、それを後悔した。
あと少しで刄が届く、と言うところで、金属が擦れ合う音がしナイフは弾け飛んだ。真孤は驚きで飛び退き、小さく
「何者？」
と呟いた。
「反対勢力(アナタノアンチ。)戦闘員の伊春田響と申します…いや、禍異物(マガイモノ)に名乗っても無駄か」
響は斧を持ち直し、転けたコオリに手を差し出す。
「捕まってください、あなたを生かすのが僕の仕事なので」
コオリは震えながら硬直している。少なくとも、見知らぬ人間の手をとれるような精神状態では無いらしい。
まぁそうか、と思い直し、響は真孤に向き直る。
「アマノさんを狙う理由は？」
「…どうでもよくない？」
二人の会話はそれに終わり、戦いが始まる。
どこで仕入れたか知れない武器を、服の隙間と言う隙間から取り出す真孤。手数では響の方が劣るであろう。
しかし響も、怯まずに真孤に斧を振い続ける。

一気に近づき、真孤の顔の前で思い切り斧を振るう。持ち前の反射神経で掠れる程度に避けられてはしまうものの、真孤の右目を縫い止めていた糸を絶ってしまう。
真孤の右目は、こちらにも見えるくらいに響の顔を反射するようになっており、でも、響のことは見えていないようだった。
「あなたの世界じゃ、殺しって罪にならないんですってね」
攻撃の手を止めずに真孤に話しかける。
「そうだよ、でも、君には関係ない」
「ありますよ、罪にならなければあなたが殺されてしまう」

響は、真孤に対して少し同情を抱いてしまっていた。
この時忘れていたのだ。
コレが「鏡月真孤」ではなく、禍異物(マガイモノ)であることを。
真孤は一瞬の隙をつき、もう一度コオリにナイフを投げた。
見事に、当たってしまったのだ。響は目を見開く。

「殺しが罪じゃない分、優しさは弱さだよ」

そう吐き捨てた真孤。
コオリは小さく何かを呟き、生き絶えた。霞掛かって、やがて氷の体は消えた。
真孤は響から逃げる。いや、逃げようとした。響は真孤の腕を掴んでいた。あざが残るほどの強さで、絶対に逃すまいと。
「そうでした。お前は真孤さんじゃないんだった」
そう返し、片手で斧を振るった。斧は真孤の左腕を通って体に推し入る。
勢い付けが甘く、真孤の体の半分のところまでしか刄が通らなかった。真孤は響の手を振り払い、斧を引き抜いた。