アナタノアンチ。 (ページ1)

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No.01　“口下手同士のチェイス” ページ1

被害者：尼野コオリ、鏡月真孤

ボロボロの狭いアパートの一室で、光を放ちながら電話が鳴る。
響はなるべく足音を立てないように急いでスマホを手にとった。

「はいこちら、伊春田です」

「…えぇ…またですか」

「今月入って、被害者数が15人を超えてるんですけど」

「平均換算で二日に一人ですよ」

「あぇ、いや、あの、不満とかでは…すみませ…」
電話の主はぶっきらぼうに電話を切った。響はまたやられた、と言う顔でスマホを持つ手を下ろし、出撃の支度を始める。
寝巻きから戦闘服に着替え、対禍異物(マガイモノ)用の武器を手に持つ。彼の武器は大きな斧であった。
「早く発生条件でも突き止められればいいのに」
ぶつぶつ文句を言いながら4階のベランダから飛び降りる。
衝撃音は聞こえない、どうやら何かをして浮いていたようだ。
時間は午前一時半、人気の少ない路地裏から、

彼らの戦いは始まる。

「幻を救えとか意味わかんないんですけど…はぁ」

彼は闇で何も見えない中、斧の柄の先で地面をコンコンと二度小突いた。
響はまるで穴に落ちるかのように、暗闇の中へ溶けていった。

「…はぁ、ｯはぁ、く、くそ、クソが…」
尼野コオリは逃げていた。
コンビニに向かった帰り、禍異物(マガイモノ)に追われているのだ。
着の身着のまま＿簡単な服とサンダルのまま、殺しに慣れた人間のコピーから逃げている。

「なんで私が…？！て言うかアレなんなの、刃物所持って日本だと捕まりますけど？！」
独り言がついつい口を吐く。
本当は喋っている場合なんかではなく、真面目に逃げるべきだ。分かってはいても、人間、焦ると正しい行動が取れなくなってしまう物だ。
「早く死んで欲しいんだけどー、ちょっと、待ってよー」
気怠げな声がコオリを追う。声の主は鏡月真狐、殺し屋を自称する女であった。
少し前に遡る。真孤は自己紹介をするなりコオリを刺そうとしているのだ。最初は頭のおかしい女だと、叫んで人を呼んだ。
でも叫んでも叫んでも誰も来ず、体力の減りを感じ黙って逃げる事にした。

「…あ、あの子だ。『アマノコオリ』…うん、外見の特徴も一致してるし、早く向かわないと」

響はコオリの危機を感じ、全速力で追った。
と同時に真孤は、
「もう、飽きたから、殺すね」
と言い手持ちのナイフを投げた。
ナイフは音を切り裂きながらコオリを追う。
コオリは一瞬だけ後ろを振り返り、それを後悔した。