58 9/29 ページ18
それから智が選んでくれたネックレス2本、指輪3つを眺めて、どれもかわいくて。
けどさっきの値段を見せられたら到底選べるはずもなく、ただ時間だけが過ぎていった。
閉店まで残り5分。
お姉さんが気を利かせて席を外してくれる。
「ねぇ、やっぱりここは高すぎない？」
「んなことねーよ。時計はさすがに高かったかもね」
智はにこにこ笑ってる。
私はなにも言えなくて、申し訳ない気持ちが勝ってしまって。
それに、嬉しいけどなんで急に智はアクセサリーを買おう、なんて言い出したのか。
未来があるならその先でいいのに。
「A」
「、え？」
「最後まで俺が選んでいい？」
「……」
「俺が選んだのならつけてくれる？」
「……」
それでもやっぱり申し訳ないって思うのはおかしいのかな。
いくら社長だからって、これは高いよ。
一番安くていくらなの？
今まで接点がなかっただけに、全然目安が分からない。
「A」
「、」
「……困らせてる？」
「え、」
智の目が、悲しそうに揺れた。
困らせてるなんてそんな、うれしいよ、嬉しいけど、
「今日はやめとこっか」
「……」
「…こんな無理矢理買ってもしょーがねぇし」
「、無理矢理なんて、」
「んや、俺の自己満。ごめんね」
智が目を伏せて振り返る。
お姉さんにすんませんって声をかけて、またお待ちしておりますって言われてる。
その瞬間押し寄せたのは、後悔の念。
なにを間違えたんだろう、どうしてこうなってしまったんだろう…
だってその背中は驚くほど遠くて、手が届きそうだと思っていたのが嘘みたいだ。
私はただ、値段に驚いただけで、智がプレゼントしてくれる気持ちは本当に嬉しかったのに。
帰り道、無言だった。
家の玄関を開けて靴箱の上をみてみたけど、鍵はない。
智が用意してくれたあの合い鍵はどこに行ったんだろう。
今更やっぱりって遅いかな、
プレゼント、アクセサリーじゃなくて合い鍵でも……なんて。
さすがにそんなこと言えない。
さっきの智の悲しそうな顔を見たら、そんなこと言えるわけない。
「……」
「A先風呂入る？」
「あ、いいよ、先入って」
「そ？じゃお先」
ご飯だってまだ食べてないのに。
背を向けるその姿は、私を避けてるようにしか思えなくて。
智の"ずっと好きでいる"、あの言葉が死ぬほど嬉しかったのに、何で今、こんなに遠くなってしまったんだろう…
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さゆ(プロフ) - こんにちは。とっても素敵なお話をありがとうございました(*´∀｀)何回読んでもぐっときます！妬いてるのも独占欲強いのもかわいい。まっすぐな智くんが素敵すぎです。また、智くんで書いてほしいなぁ。楽しみにしてます。 (2020年3月5日 12時) (
レス) id: b39ec88e32 (このIDを非表示/違反報告)
智恵里(プロフ) - うわぁーん(。´Д⊂)素敵すぎます！！幸せになってくれて良かった！！ (2019年11月18日 20時) (レス) id: 82290003ef (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - さぼてんさん» さぼてんさん、こんにちは！無事完結しました！次のお話もお付き合いいただけると嬉しいです♪ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - ともさん» ともさん、こんにちは！楽しんでいただけたようでよかったです(*^_^*)コメントありがとうございます！ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - ていくさん» ていくさん、こんにちは！お話、最後までお付き合いいただき、楽しんでいただけたようでよかったです(*^_^*)ニノのお話読みたいと言ってくれる方がいてよかった(笑)一歩踏み出す勇気が出ました(*^_^*)いつもありがとうございます！ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うさこ
| 作成日時：2019年9月7日 0時
