56 10/10 ページ16
「…Aちゃん、こっち」
泣きそうなあたしの腕を引いて、さとくんがまっすぐ歩き出す。
こっち、教室じゃなくて移動教室のある方……っ、、
「さとくん、」
「その顔じゃ教室行けないでしょ」
「、」
「それに……、他の奴に見せたくねぇし」
「……」
連れられて入ったのは、芸能資料室。
……こんな教室あるのすら知らなかった……
「ここなら誰も来ない」
「…あたし、初めて知った……」
きょろきょろ部屋を見回すと、昔の写真や能面みたいなのが飾ってある。
「たまにここで授業サボって絵描いてんの」
「、絵？」
「ん。」
「……能面の絵？」
「それも描いたことあるけど、大体外かな」
「外？」
「ん。結構きれーだよ」
窓に向かって行って鍵を開けて。
窓を開けると、目の前には桜の木。
今は咲いてないけど、春になったら綺麗なんだろうな……
「……」
「…Aちゃんと見たかったな」
「え、」
「だってほら、桜が咲く頃には、俺いねぇもん」
「、」
当たり前の衝撃に、一瞬目眩がした。
…そうだ、さとくんは3年生で、今年受験で。
……あたしが3年生になったら、さとくん、学校から居なくなっちゃうんだ……
「……」
「Aちゃん、志望校とか考えたことある？」
「え、…ない、けど……」
「そっか(笑)どーすっかなー。」
「…さとくん、志望校は？」
「んー。……引かないで聞いてくれる？」
「、うん、もちろん」
さとくんは頭をポリポリ掻いて、意を決したように頭を上げた。
「…Aちゃんと同じとこ」
「、」
「……なんてね(笑)忘れて」
一瞬目が合って、逸らされる。
「、なんで、」
「なんでって…、」
「なんで忘れてなの、 」
「そっち(笑)？」
「あたしも同じ大学がいいっ、さとくんとまた、同じ学校に通いたいっ、」
大学っ、、
考えたこと無かったけど、あたしだってさとくんと同じがいいに決まってる。
総合大学なら、分野は違っても一緒の大学を目指せるかもしれない。
もし出来るなら、そうしたいっ、
鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたあと、いつもみたいにへにゃあって笑った。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1415人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れな(プロフ) - うさこさん初めまして！この作品が大好きで私は占いツクールのアカウント作りました！私事ですが、今年の春高校に入学しましたがあんまり楽しくなくて…でも、最近はうさこさんの作品を楽しみに頑張ってます！笑 いつでも大丈夫なので続きが見たいです！！！！ (2022年5月20日 17時) (
レス) @page39 id: 0d31ea7a50 (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - キヤーーー！ハマって最初から一気読みして寝不足なんですが（笑）完結していなかったのですね、続きがめちゃくちゃ気になりますが、また気が向いたら更新してくださいね〜♪今日はぐっすり眠らせていただきます（笑） (2020年10月13日 20時) (レス) id: 273a48f110 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - とわさん» とわさん、こんにちは！大好きと言っていただけて、とても嬉しいです！続きも少しずつ進めていこうと思っています。よろしくお願いします(o^^o) (2020年8月12日 7時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - まっしゅるーむさん» まっしゅるーむさん、はじめまして！楽しんでいただけてよかったです(o^^o)ゆっくりにはなりますが、またこちらのお話も進めていこうと思っています。よろしくお願いします！ (2020年8月12日 7時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - ふりさん» ふりさん、はじめまして！お返事遅くなり申し訳ありません。。胸キュンしていただいて嬉しい限りです(o^^o)私もそこまでは書きたい……！と思っているところではあります！気長にお待ちくださいませ…！ (2020年8月12日 7時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うさこ
| 作成日時：2018年8月2日 21時
